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太陽光パネルの米最大手ファースト・ソーラー 長谷川祐子

ファースト・ソーラーの太陽光パネルが使われた米カリフォルニア州の太陽光発電所(Bloomberg)
ファースト・ソーラーの太陽光パネルが使われた米カリフォルニア州の太陽光発電所(Bloomberg)

First Solar 「インフレ抑制法」が強く後押し/71

 ファースト・ソーラーは米太陽光パネル最大手だ。1999年、中西部オハイオ州で従業員50人の企業として創業した後、生産拠点を同州内に増設し、今年前半には米国内3カ所目を設ける。さらに2025年までに同4カ所目を米南東部に新設するなどし、最大12億ドル(約1600億円)を投資する予定だ。完成すると、生産能力は発電容量ベースで4.4ギガワット増え、インド、マレーシア、ベトナムにある拠点も含め、計20ギガワットを超す計画になっている。

 同社は太陽光パネルの素材にテルル化カドミウム化合物を使用してきた。他社が使うことが多い結晶シリコンに比べて、コスト、拡張性、発電能力の面で優位性があるとしている。昨年8月、米南東部の拠点新設を発表した際、マーク・ウィドマー最高経営責任者(CEO)は発表文で、巨額投資を決めた背景にバイデン政権の目玉政策「インフレ抑制法」を挙げた。

発電量の割合は2.8%

 同法は昨年8月に成立し、「30年までに温室効果ガス排出量を05年比40%削減することを目指す」という内容で、脱炭素化、再生可能エネルギーの活用、電気自動車(EV)の普及を促すため、連邦政府の予算3600億ドル(約48兆円)を割り当てた。太陽光関連では、パネルの国内生産や発電所の建設を促す税優遇などを盛り込んでいる。

 米エネルギー省のデータによれば、米国の総発電量に占める太陽光発電の割合は21年、2.8%にすぎなかった。インフレ抑制法に盛り込んだ税優遇によって、パネルメーカーや発電業者による設備投資が加速する余地がそれだけあるともいえるだろう。

 太陽光パネルの圧倒的首位は中国だ。米議会調査局が昨年5月にまとめた報告書によれば、中国は20年、世界生産量の70%を占めた。次いでベトナム(8%)、韓国(5%)、マレーシア(4%)などで、米国は3%にすぎない。

 当然、メーカー別でも中国企業が昨年上半期の出荷量上位10社中7社を占める(米エネルギー省の報告書「太陽光業界最新事情22年秋」)。ファースト・ソーラーは世界9位であり、上位10社中唯一の米国企業となっている。

中国製の輸入を差し止め

 米国は太陽光パネルの設置数が世界2位だ。以前は中国製の輸入が多かったが、急減した模様だ。

 ロイターが昨年11月11日付で配信した記事によると、米関税当局は「ウイグル強制労働防止法」が施行された22年6月21日から10月25日にかけて、中国製の太陽光パネルなど太陽光発電機器部品の輸入1053件を差し止めた。差し止めた製品を製造した中国企業3社は、米国に輸出した太陽光パネルの最大3分の1を占め、「今後も出荷が差し止められるとの懸念から米国向けの新規輸出を停止している」(同記事)。米政府は同法の施行を受け、中国・新疆ウイグル自治区で製造された製品の輸入を原則…

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