台湾ファブレス企業の最大手、聯発科技 富岡浩司
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MediaTek 携帯電話の3分の1に半導体供給/72
聯発科技(メディアテック)は工場を持たずに半導体開発・設計に専念する「ファブレス」と呼ばれる業種の台湾最大手だ。台湾の調査会社トレンドフォースによると、2021年売上高は米クアルコム、米エヌビディア、米ブロードコムに続く世界4位だ。
聯発科技が開発・設計する半導体は、主にスマートフォンやパソコンのCPU(中央演算処理装置)として組み込むロジック(論理演算機能)半導体。22年10~12月期決算説明資料によれば、組み込み製品別の売上高構成比はスマホ52%▽ルーター(パソコンなどをインターネットにつなぐ接続機器)、タブレット端末、ノートパソコンなどからなる「スマート・エッジ・プラットフォーム」42%▽パワー半導体7%──だった。
半導体市場での存在感は非常に大きい。同社ウェブサイトによれば、同社が開発・設計した半導体は携帯電話、家電、接続機器、IoT(モノのインターネット)機器など20億台を超す機器に組み込まれる。携帯電話は「世界中の台数の3分の1近く」に同社の半導体が組み込まれているという。
特に携帯電話向けのシェア拡大が目覚ましい。蔡力行・最高経営責任者(CEO)は今年2月3日の決算説明会で、「22年中、中国製アンドロイド・スマホのフラッグシップ(最高価格帯)で市場シェアが20%超となった」と説明した。21年は0%だったという。第5世代移動通信規格「5G」対応のスマホ向けの新製品「ディメンシティ9000」シリーズの投入が奏功したとしている。
23年もフラッグシップ市場でシェア拡大に自信を見せる。同社製品を中国スマホ大手の維沃移動通信が上位機種「vivo X90」などに採用した。
新興国市場に期待
スマホの世界出荷台数は今年、前年割れになるという予想がある。しかし、蔡CEOは「5G対応スマホの世界普及率は22年の40%台後半から23年には50%台半ば程度に上昇する」と見通す。普及率が世界的に拡大していることも追い風になる。普及率が最も伸びそうな市場はインドや東南アジアなど新興国で、同社が得意とする中・低価格帯としている。
一方、スマート・エッジ・プラットフォーム向けでは、無線通信の第6世代規格「Wi-Fi6」やその発展型「Wi-Fi6E」に対応する製品のシェアが拡大したほか、第7世代規格「Wi-Fi7」対応製品を22年1~3月期に発売した。
もっとも、足元の業績は非常に厳しい。22年10~12月期売上高は前年同期比15.9%減、前四半期比23.9%減の1081億台湾ドル(約4760億円)に縮小し、純利益は前年同期比38.5%減だった。背景には主要国で新型コロナウイルスの影響が薄れて在宅特需が一巡、パソコンやスマホの販売が鈍化したことがある。
中国市場も厳しい。22年12月まで続いたゼロコロナ政策によって、スマ…
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週刊エコノミスト
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