「会員制量販店」の米最大手コストコホールセール 宮川淳子
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Costco Wholesale 年会費払う客のデータ管理が強み/73
コストコホールセールは「メンバーシップ・ホールセール・クラブ」(会員制量販店)の米最大手だ。入店できる人は年会費を支払った会員と同伴者に限り、取扱商品を厳選して安く売る独自の業態を特徴とし、過去10年以上にわたり増収を続けている。
2022年版年次報告書によれば、「米小売市場での主な競合他社は大型量販店の米ウォルマート、米ターゲット、米クローガー、米アマゾン・ドット・コム」。そのほかウォルマート子会社が運営する会員制量販店「サムズクラブ」や同業の米ビージェイズ・ホールセール・クラブ・ホールディングスも競合相手とする。しかし、コストコは会員制量販店の最大手としての強みから顧客の奪い合いを回避できており、安定的な業績につながっていると考えられる。
米国の消費者物価指数(季節調整前の総合指数、全品目)は23年1月、前年同月比6.4%上昇した。変動の大きい食料品は10.1%、エネルギーは8.7%と大幅に上がり、家計の負担が重くなっている。全品目の前年同月比上昇率は昨年6月の9.1%をピークに鈍化しているが、ロシア・ウクライナ戦争に終わりはみえず、インフレ圧力が長引いている。消費者が物価上昇に敏感な状態がしばらく続く可能性が高い。
コストコの22年8月期売上高は前年比16%増の2269億ドル(約30兆円)と大幅に伸びた。同社が重視する既存店売上高が14%増加したことが大きく貢献した。同社は通年営業した店舗とEC(電子商取引)サイトの売上高を「既存店売上高」と定義し、前年との比較・分析をしている。例えば、22年8月期の売り上げ増は同社が販売するガソリンの価格高騰が大きく影響した。ただ、インフレやガソリン価格の変動はコントロールできないため、それ以外の商品の分析に力を入れている。
会員制度の強み
コストコの経営哲学は価格決定権を常にもち、インフレやデフレで経済環境が変わっても安い価格で商品を売ることだ。その一環として、消費者に人気のある低価格の商品を厳選し、店に置く品目数を4000種未満にしぼっている。この中には、価格競争力が特に高い同社のプライベートブランド「カークランド・シグネチャー」も含まれている。
同社の店に入れるのは、年会費(米国では60ドル、日本の個人会員は4840円)を支払った会員と同伴者だけだ。厳格ともいえる会員制度は客の入退店を管理することで、入退店日時、購入商品、購入金額などの膨大なデータや履歴を収集できる。同社はそれを用いて取扱商品の選別、発注点数、価格、売れやすい時間帯などを詳細に把握し、在庫ロスの削減や在庫回転率の改善につなげている。
ECサイトの拡充
22年8月末時点の有料会員数(家族会員を除く)は6580万人に上り、前年比7%、過去5年平均で6.3%増えた。会員1人当たりの年…
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週刊エコノミスト
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