世界で1億人が使う口コミサイト運営の米イェルプ 岩田太郎
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Yelp AIで有害レビューを選別する機能を導入/74
イェルプはレストラン、自動車修理工場、小売店、医院などの利用者が投稿した「レビュー」(口コミ)を表示する同名の情報サイトを運営する米IT(情報技術)大手だ。
オンライン決済サービスの米ペイパルを退社した技術者2人が2004年、米西部サンフランシスコで創業した。きっかけは創業者の1人が評判のいい医師を探すのに苦労し、頼りになるのは友人の口コミだと気づいたこと。2人が作成したウェブサイトには友人のメールアドレス一覧を入力する画面があり、「サンフランシスコの親切な内科医を紹介して」といったメッセージを付け加える。そうすると、メッセージを含んだメールが一斉送信されるというものだった。友人の返事はイェルプのサイトに掲載され、誰でも閲覧できる仕組みだ。
その後、友人に紹介を依頼する機能を廃止し、誰でもレビューを投稿できるサービスに変えた。ユーザー数は急増し、検索大手の米グーグルや米ヤフーが買収を持ちかけるほどの人気サイトに成長、12年に上場した。イェルプが掲載するレストランなどサービス業者の所在地は、東京都と大阪市を含む世界32カ国、219以上の都市に上るという。
レビューの投稿数はサービス開始から22年12月末までに累計2億6528万件に上り、22年の月間平均UV(閲覧者)はパソコン利用が3805万人、携帯電話利用が5912万人だった。つまり、全世界で1億人近くが利用した計算になる。有料広告を出稿するサービス業者は同年10~12月、54万5000に上った。
イェルプが調査会社の米ケルトン・グローバルに委託して21年10月に米国で実施した世論調査の結果によると、回答者の97%は「(星の数だけの評価と比べ)他のネットユーザーが書いたレビューは信頼できる」、7割は「レビューを読まずに利用したことがない店に行くことはめったにない」を選んだ。イェルプをはじめとする口コミサイトは米国人の消費行動の一部となっていることがうかがえる。
売上高16%増
22年12月期の売上高は前期比16%増の11億9350万ドル(約1599億円)。インフレが進んだ22年、経費を見直す広告主が多い中、レストラン、小売り、美容、フィットネス、健康関連のサービス業者による広告売上高が同17%増えたことが貢献した。
一方、インターネット広告大手の米メタ・プラットフォームズの売上高(22年12月期)とグーグルを運営する米アルファベットの広告売上高(同)はいずれも前期比4%減と苦戦した。イェルプの最高財務責任者は今年2月9日の決算発表会で、「地域に密着し、広範な業種を客とする当社の広告基盤に耐久性があることを示した」と業績が競合他社を上回った要因を説明した。
レストランや美容室向けのオンライン予約管理サービス「イェルプ・ゲスト・マネジャー」も提供する。ユーザー…
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週刊エコノミスト
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