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教養・歴史 書評

非占領下日本における政治家の動きとメディア状況を検証 井上寿一

 ロシアのウクライナ侵攻が続いている。ウクライナの一部地域は事実上、ロシアに占領されたままである。日本は占領と被占領の両方の歴史的な経験を持つ。第二次世界大戦下の日本による中国や東南アジアの占領は失敗に終わった。

 それでは被占領の方はどうか。連合国による対日占領政策は、間接統治による寛大なものだったと評価できるのか。小宮京『語られざる占領下日本』(NHKブックス、1760円)が考える手がかりを与えてくれる。

 本書は四つのエピソードから被占領の現実を活写する。プロ野球の広島東洋カープの創設に深く関わった元衆議院議員・谷川昇の占領政策に翻弄される起伏に富む生涯、「バルカン政治家」(状況に応じて敵味方をすぐ変える)三木武夫の占領との戦い、昭和天皇をも巻き込もうとする「秘密結社」フリーメイソンに対日占領政策の情報を得るべく入会する政治家たち、占領期の「保守本流」とは異なる田中角栄の実像など、屈辱的で語りたくない過酷な被占領の歴史的な経験が明らかになる。

 占領政策は巧妙だった。その手法の一つとして、占領当局はメディア、なかでもラジオを活用した。この点に関連して、太田奈名子『占領期ラジオ放送と「マ…

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