教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

米連邦議会議事堂襲撃事件などの背景にある陰謀論の正体は/167

ビョンチョル・ハン(1959年~)。韓国出身のドイツで活躍する哲学者。現代社会の病理を批判し、アートなどさまざまな分野に影響を与えている。著書に『透明社会』などがある。(イラスト:いご昭二)
ビョンチョル・ハン(1959年~)。韓国出身のドイツで活躍する哲学者。現代社会の病理を批判し、アートなどさまざまな分野に影響を与えている。著書に『透明社会』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 米連邦議会議事堂襲撃事件などの背景にある陰謀論の正体は アメリカの連邦議会議事堂襲撃事件やドイツの国家転覆を謀ったとされる事件など、最近背景に陰謀論があるとされる出来事がよく起こっています。なぜ今、陰謀論が広がっているのか、不安を覚えます。(大学院生・女性)

A 氾濫する情報と危機的状況の中、アイデンティティーを求める人たちを待つ落とし穴

 よく考えれば本当にそうなのだろうかと思うことが、今世界中に陰謀論として広がっている感じがしますね。一見荒唐無稽(むけい)とも思われることを、一部の人たちがかたくなに信じているのはなぜか? また、どうしてそのような言説が簡単に広がってしまうのか?

 この問題を考えるヒントになるのが、ドイツで活躍する哲学者ビョンチョル・ハンの「情報支配制」という概念です。ハンは、現代の民主主義が情報支配制に陥っていると指摘します。情報支配制とは、文字通り情報とデータによって人々が支配されてしまっている状況のことです。

 具体的には、私たちがインターネット上でSNS(交流サイト)をはじめとしたさまざまな情報に影響を受けていることを指します。しかも問題なのは、自分たちが自由に情報を取りに行くことができると信じ、それを実践している点だといいます。それゆえそうした情報を介した支配が容易になってしまうわけです。

議論が不安を払拭する

 なぜ情報にさらされていると人の支配が容易になる…

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