生産性が向上してもなお日本の賃金が上がらない理由 斎藤太郎
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2023年の春闘賃上げ率は1994年の3.13%以来、約30年ぶりに3%台に乗る可能性が高まっている。ただし長期的に見れば、日本の賃金は低迷が続いてきた。
主要先進国について、90年を起点とした21年の賃金水準を比較すると、日本以外の国は2倍から3倍以上となっているのに対し、日本は90年からほとんど伸びていない。日本ではデフレが長期化したことも名目賃金伸び悩みの一因となっている。しかし、物価上昇率で割り引いた実質賃金で見ても、日本は主要各国に比べて低迷している(図1)。
賃金上昇のためには、労働生産性の向上が不可欠とされる。労働生産性=付加価値(実質GDP〈国内総生産〉)÷労働投入量(就業者数×労働時間)で表される。主要先進国の労働生産性の推移を確認すると、日本は90年からの約30年間で労働生産性は約50%高まっており、英国と同程度、フランスを上回っている。米国、ドイツより下回っているが、実質賃金ほどの差はない(図2)。少なくとも、労働生産性の低迷が実質賃金伸び悩みの主因とはいえない。
労働時間削減の盲点
問題は、生産性向上の中身にある。労働生産性を高めるためには、その式から明らかなように、「分子の付加価値を増やす」「分母の労働投入量を減らす」という二つの方法がある。日本は分子にあたる実質GDPの伸びが低く、分母にあたる労働投入量、特に労働時間の減少幅が非常に大きいという特徴がある…
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週刊エコノミスト
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