“ゼロコロナ”後の経済復活へ李強首相の手腕に注目 酒井昭治
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3月開催の全国人民代表大会(全人代)を経て、習近平政権の3期目が正式発足した。国務院(政府)トップには、中国共産党序列2位の李強氏が就任。今後は首相として、1期目となる5年間の政権運営をつかさどる。
李強氏は多くの歴代首相とは異なり、国の運営を担う副首相の経験がなく、手腕は未知数との見方が多い。だが民間企業の発展著しい浙江省や江蘇省、上海市でキャリアを積み、外資企業の誘致などで実績がある。約3年の「ゼロコロナ政策」で傷んだ国内経済復活に向けた政策に注目が集まる。
「国進民退」の懸念拭う
全人代閉幕後の記者会見では、李強首相は今後5年の目標や経済対策に加え、民間企業の発展に言及。「民間経済に対する中国政府の方針は変わっていない」とした上で、「今後もあらゆる企業を平等に扱い、法律に基づいて企業の権利を守り、公平な競争環境の促進などを通じて企業の経営環境を発展させる」とした。また、「全社会が起業家を尊重する良好な雰囲気を醸成するよう努める」方針も示した。国有企業が成長する一方、民間経済が縮小する「国進民退」への懸念を拭いたい構えだ。
就任後の動向からも民間企業支援の姿勢がうかがえる。3月21日から2日間、初の国内視察を実施。その場所に選んだのが湖南省だ。工業都市の株洲市では鉄道製造大手CRRCや合金製造企業を、続いて訪れた省都の長沙市では、新エネルギー車メーカー大手BYDなど、製造業大手を訪問した。
その過程で李強首相は、「革新的テクノロジーのためには先端製造業の発展が重要」とし、人材育成やコア技術の開発推進を各企業へ要求。続いて開催した座談会では、製造業のスマート化やグリーン化などと並び、ハイテク技術の国産化強化や、「中国産」から「中国ブランド創造」への転換加速など、国産技術強化の必要性を強調した。半導体など先端技術分野を中心に欧米からの圧力が強まる中、「自立自強」を訴えた。
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週刊エコノミスト
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