習政権ナンバー2に蔡奇氏台頭 強まる習氏独裁に反発も 金子秀敏
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「???必須下台(???は必ず退陣せよ)」。中国・北京の天安門の赤い壁に習近平国家主席批判と見られる落書きが出た。4月8日、天安門中央の壁を作業員がシートで覆っている画像がネット上に流れた。退陣を要求する人物の名はシートの下だが、「習近平」か「独裁者」だろう。昨年10月、北京市内の歩道橋に出た張り紙にはそう書かれていた。
中国共産党大会で総書記に3選された習氏が3月上旬、全国人民代表大会(全人代)で国家主席に3選され、第3次習政権がスタートしたが、まだ党内は安定しない。
全人代では習主席に次ぐ党内序列2位の李強氏が首相に、序列6位の丁薛祥・党中央弁公庁主任が筆頭副首相に転じ国務院(政府)を固めた。2人とも習氏の元秘書官を務めた習近平派なので、習総書記と李克強前首相が対立した時代が終わり、党と政府が一体の習近平・李強体制が生まれると思われていた。
党に従属する「政府」
はたして李首相は就任後、最初の国務院常務会議(閣議)で「国務院は政治機関である」と宣言した。政府は党の指導を受ける機関であり、党から独立した行政権力ではないという意味で、例のない動きだ。
改革派の鄧小平時代は党が行政機関や国有企業経営に介入しない「党政分離」「党企分離」が基本だった。だが、習政権では、党がすべてを決め、政府はそれを忠実に執行するという毛沢東時代への回帰が色濃くなった。
李首相は2度目の閣議で「国務院工作規則」を改定し、「重大な決定事項は、すべて、ただちに、党中央に報告して指示を仰ぐ」と国務院の権限を自ら縮小した。
さらに、毎月1回、国務院で習近平思想の学習会を開き、習総書記が党中央政治局で行った重要演説を全官僚に学習させることも決めた。序列2位は名ばかりで、李首相の存在感は薄い。
李首相に代わって急に台頭したのが序列4位の蔡奇・党中央書記処筆頭書記(政治局常務委員)だ。3月20日から22日まで習主…
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週刊エコノミスト
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