中国版の対話型AI登場 政府は急ピッチでルール整備 岸田英明
中国のIT大手、百度(バイドゥ)が3月16日、対話型人工知能(AI)サービス「文心一言(アーニーボット)」を発表した。「中国版Chat(チャット)GPT」として注目が集まる中、同社の李彦宏会長が自ら紹介。▽文芸(小説の続編に関するアイデア出しなど)▽商業用文案(架空の企業のキャッチコピー創作など)▽計算(鶴亀算)▽中国語理解(故事成語の解説など)▽マルチモード生成(架空のイベントのポスター創作など)──の各ケースについて、録画映像を示しながら、性能をアピールした。当面は個人(要順番待ち)や利用契約を結んだ企業などユーザーを絞って提供する。
ルール整備急ぐ当局
中国では同社のほか、アリババや騰訊控股(テンセント)、科大訊飛(アイフライテック)や中国科学院、復旦大学などの有力な企業・研究機関が、同様の研究開発に取り組む。チャットGPTと比べて2~3年の技術的な遅れを指摘する声や、開発に必要なチップの確保が米国の輸出規制で難しいなどの懸念も聞かれるが、近い将来、中国でも普及が進むだろう。
“本家”のチャットGPTは、中国では当局の指導で利用できない。「自由な言論」をベースにした外国製の対話型AIは、国家や指導者のイメージを損ねる結果を生成しかねず、受け入れられないためだ。一方当局は国内企業が開発したものであれば一定の条件で認めるべく、ルール整備を急ピッチで進める。今年1月施行の「インターネット情報サービス深度合成(=AIによる文章や画像の生成)管理規定」では、「いかなる組織・個人も深度合成サービスを用いて国家の安全と利益に危害を加えたり、国家のイメージを損ねたりしてはならない」と断じ、提供者に利用者の実名認証や「好ましくない情報」を見つけた際の当局への報告などを義務付ける。
中国共産党を批判する文章や、指導者をちゃかすような画像の生成はまずアウトだろう。そうした「リスキーなアウトプ…
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週刊エコノミスト
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