“ほどよいインフレ”が今後も続く理由 藻谷俊介
世界がインフレ収束に向かう中、最近投資家によく尋ねられるのは、日本だけインフレが遅れて加速したり、粘着質になったりする可能性である。人により、これが懸念だったり、逆に脱デフレ定着の期待であったりする。
他国対比で緩和的な金融環境や急激なインバウンドの流入などが独自のインフレを想起させるのは不思議ではない。実際に日本は昨秋から他国にあまり見られない第4波のインフレを経験しており、世界の特殊例となっている。
通常の前年比ではなく、3カ月間の短いスパンで計算したリアルタイム・インフレ率(季節調整済み前月比伸び率の3カ月平均年率換算値)で詳しく見てみよう。
図1のように、財価格に表れた大きな第4波の発生要因は、日本企業固有の値上げの先送り癖と、冬にかけて1ドル=150円まで進んだ円安が挙げられる。逆に図1が直近で急落したのは電気ガス料金に2月から補助金が出るようになったからである。荒っぽい動きに錯覚が生じやすいが、その瞬間的効果を除くと、現実の日本の足元の総合的なインフレ率は年率2.5~3%程度と考えられる。
多くの機関投資家が指摘するのは、アメリカのようにモノからサービスへインフレが飛び火するという連想である。アメリカではモノのインフレは今ほぼゼロに戻っているのに対し、サービスが7~8%の高いインフレ率を維持している。原因はともかくとしてアメリカではサービス価格だけが異様に上昇している…
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週刊エコノミスト
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