経済・企業株式市場が注目!海外企業

企業向けeラーニングのカナダ大手ドセボ 清水憲人

教材を簡単に作成できるとするドセボの操作画面(同社作成のユーチューブ動画より)
教材を簡単に作成できるとするドセボの操作画面(同社作成のユーチューブ動画より)

Docebo 世界3400社が利用する遠隔教育システム 売上高は4年で5.3倍/76

 ドセボは企業向けにインターネット経由でeラーニング(遠隔教育)用ソフトウエアを提供するカナダ大手だ。2005年にイタリアで創業した後、海外展開を進め、16年にはカナダ最大都市のトロントに本社を移転。19年にはトロント証券取引所、20年には米ナスダック証券取引所に上場した。なお、社名の発音はイタリア語式の「ドチェボ」に近いが、ここでは日本語メディアで用例が多い英語式の「ドセボ」と表記する。

 イタリア、米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、アラブ首長国連邦、アイルランドの8カ国に現地法人を置き、22年末現在、約70カ国の約3400社を顧客とする。顧客は米クラウド事業大手アマゾン・ウェブ・サービス、独自動車大手BMW、仏化粧品大手ロレアル、蘭ビール大手ハイネケンなどさまざまな業種にわたっている。22年12月期売上高の地域別構成比は北米が76%で、残りは主に欧州だ。

 近年、インターネット経由でeラーニング用ソフトウエアを提供するシステムを「クラウド型LMS(学習管理システム)」と呼ぶことが多い。主に二つのメリットがある。

 一つ目は利用企業の顧客、社員、取引先からなる受講者にとって、受講する場所や時間の制約が少ないことだ。仕事の合間に少しずつ受講し、理解しにくい部分を繰り返し視聴でき、対面式の教育のように特定の場所・時間に集まらなくていい。二つ目は利用企業にとって誰がどの講座を視聴したのかを正確に把握できることだ。

教材作成は容易

 個々の企業がeラーニングのコンテンツ(教材)を一から作成するのは骨が折れるだろう。ドセボは教育内容をモジュール(単元)化したひな型を用意し、利用企業がコンテンツを簡単に作成できるようにした。

 説明動画を基にその手順を再現してみよう。まず基本画面のレイアウトを指定し、背景、フォント、下線の色などを選ぶ。企業のロゴを表示するなどの指定もできる。次に受講者の登録。社員向け教育なら部署や職階によって受講可能なコンテンツや期間を設定する。名簿のデータを取り込めば作業を省力化できる。それから講座名を決め、受講者を選んでコンテンツをアップロードする。複数のコンテンツを順に視聴させたい場合は、基礎編を終えないと応用編に進めないといった設定もできる。

 講座ごとに内容に精通する利用企業の社員を設定し、受講者が問い合わせられるようにする機能もある。また、進捗(しんちょく)状況に応じて何らかの報酬を得られるようにするなど、学習意欲を高める機能もある。もちろん全機能を利用する必要はなく、利用企業に合う機能を選べばいい仕組みだ。

22年に黒字転換

 新型コロナウイルスが20年から世界を席巻したことで普及したリモートワークも追い風になり、ドセボの業績は順調だ。売上高は18年の2707…

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