人々の物価上昇懸念は日銀より深刻 愛宕伸康
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4月に新しく日銀総裁に就任した植田和男氏は就任記者会見(4月10日)で、「現状の経済、物価、金融情勢を鑑みると、現行のYCC(イールドカーブ・コントロール)を継続することが適当である」と述べた。
内田真一・新副総裁も同じ就任記者会見で「いま日銀が直面している課題は、いかに工夫を凝らして効果的に金融緩和を継続していくかだ」と述べ、両氏ともこれまでの緩和を継続する考えであることを明らかにした。原稿執筆時点では4月27~28日に開かれる金融政策決定会合でどのような決定がなされたか知る由もないが、市場エコノミストの多くは6月の決定会合で日銀が動くとみている。市場エコノミストの見方がこれほど一致するのは珍しい。サプライズで動いてきた黒田東彦総裁の時代にはなかったことだ。
硬直的な緩和政策で低下した市場機能を改善させるために動くなら、市場の見方と一致するタイミングが望ましい。市場の波乱が避けられるし、黒田総裁時代に崩れてしまった市場との対話が修復されるという期待にもつながる。それで長期金利が多少上がったとしても、国債を買いたい投資家が待ち構えており、極端に跳ね上がることはない。むしろ市場機能が回復するメリットの方が大きい。
日銀の使命との整合性
もう一つ、極めて重要で根本的な論点がある。日銀の使…
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週刊エコノミスト
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