教養・歴史書評

不安を克服し、現状を変えたい人に示す6つのステップ 孫崎享

×月×日

 米国の大学の素晴らしさは実社会の動きと遊離していない点にある。

 1980年代後半、私は研究員として1年、ハーバード大学にいたが、日本車の脅威が増した時にはゼネラル・モーターズ(GM)社副社長を呼んで討論会を行い、映画「スター・ウォーズ」が論議されていた時には安全保障の第一人者スコウクロフトに司会をさせ、討論会を催していた。実社会と遊離していないという点では『命綱なしで飛べ』(サンマーク出版、1980円)の著者トマス・J・デロングも同じである。

 デロングはモルガン・スタンレーの専務を経て、ハーバード・ビジネススクールの教授を務めている。

 彼は現代の特徴を「今日、個人も組織もあらゆる脅威に直面している。経済は不安定で、新しいテクノロジーによってさまざまな影響がもたらされている。企業の形態も文化も変わってきている」としている。そしてこの中で人々は不安を感じ、

「うまくできる仕事だけこなし(中略)新しいタスクを受け入れることはない」傾向を示す。彼は「(このような)消極的な姿勢では、個人も組織も発展は見込めない」と断ずる。

 そして「命綱なしで飛べ」と説く。

 たぶん、多くの人は成功するためには新しい対応をしなければならないことは認識している。でも不安がある。この不安をどう克服するかがこの本の核心である。その中で、「命綱なしで飛べる6つのステップ」を見てみたい。

①立ち止まって考える

②過去のことは忘れる

③「具体的な目標」と「計画」を立ててみる

④メンターやアドバイザー、「支援のネットワーク」に頼る

⑤「現実」をみつめ、受け止めようとする

⑥自分の弱さを認め、さらけ出す

 この本は現状を変えなければならないと思う人に心の準備を教えてくれる本である。

×月×日

 私は日本の歴史を書いてきた。戦後史から始まり、日露戦争から第二次大戦への道のり、徳川幕府の崩壊、外国人の日本の歴史の見方などを書いた。従…

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