高値が続くアルミ 中国が生産量シェア6割で世界一/146
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昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、アルミニウムの国際価格が一時1トン=3800ドルを超え、過去最高値を付けた。現在は2400ドル前後で推移するものの、新型コロナウイルス禍前の水準を上回る。ロシアがアルミニウムの主要な生産国であることが理由の一つだ。
地球表面の地殻を構成する物質として、アルミニウムは酸素、ケイ素に次ぐ3番目に豊富な元素である(本連載の第40回を参照)。また高い電気伝導度と熱伝導度を持つことから、日常生活に有用な元素として電機製品や送電線など広く使用されている。
アルミニウムは鉄の約3倍の熱伝導率を持ち、軽量で展性と延性に富む性質から、ジュラルミンなど軽金属合金の主要な原料として航空機などに用いられている。そのほか、表面に丈夫な酸化物の被膜を作り、経済的で耐食性に優れた金属である特性を生かして、サッシや自動車部品などにも利用される。
熱帯雨林に多く分布
このようにアルミニウムは身近な金属だが、鉄や銅などと比べると発見は遅く、20世紀になってから本格的に利用されるようになった。その理由は高校の化学で学ぶ「イオン化傾向」にある(図)。金属が陽イオンになる度合いのことで、イオン化傾向が小さいほど陽イオンになりにくく、単体(金属)として存在しやすい。
よって、イオン化傾向が大きいリチウム(Li)は陽イオンになりやすく、小さな金(Au)は陽イオンになりにくい。そのため、自然界でリチウムは単体としては存在できず、金は単体(自然金)として産出する。イオン化傾向が大きいアルミニウムも地中では化合物としてしか存在できず、製錬には大きな電力が必要となる。
アルミニウムは地殻を構成する長石などの鉱物に多く含まれ、ケイ素や酸素と結びついた「ケイ酸塩鉱物」として産出する。採掘できる資源は水酸化アルミニウム(Al(OH)₃)が主成分の「ボーキサイト」と呼ばれる。
ボーキサイト鉱床はアルカリ金属とアルカリ土類金属が風化作用により溶脱してアルミニウムが濃集するプロセスで形成され、熱帯雨林地方に多く分布する。ボーキサイトの主な生産国はオーストラリア、中国、ギニア、ブラジル、インドネシ…
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週刊エコノミスト
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