電池材料などのニッケル 鉱石半分がインドネシア集中/147
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昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、アルミニウムと同様にニッケルの国際価格も一時急騰した。世界最大の生産国であるインドネシアがニッケル鉱石の輸出を禁止中、ロシアがニッケルの主要生産国だったことが影響した。
ニッケルは地球上で5番目に多い元素だが、そのほとんどは最深部の核に存在し、地球内部ではかなり偏在している。リチウムやコバルトなどと同じくレアメタルの一つに数えられており、腐食と酸化に強く、高い融点(セ氏1453度)と延ばしやすい性質(延性)を持つ。
こうした特性からクロムなど他の金属との合金とし、ステンレス鋼や耐熱鋼が作られる。さらに、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル酸リチウムイオン電池など、多様な電池材料として利用されている。こうした用途ではニッケルを代替できる物質がほとんどないため、近年は需要が急増している。
硫化、酸化鉱で埋蔵
自然界でニッケルは、硫黄と結合した硫化鉱、酸素と結合した酸化鉱として埋蔵されている。酸化鉱は風化土壌の浅部に多く残るリモナイト鉱や、土壌の深部に残るサプロライト鉱として産出し、後者は前者より品位(元素の含有率) が高い。なお、ニッケル鉱石の中でも硫化鉱はニッケル地金の原材料となり、また酸化鉱は鉄ニッケルの合金からなるフェロニッケルの原材料となる。
地球全体ではニッケルは大陸地域で数十億年前のマグマが固結した斑糲(はんれい)岩に含まれるほか、熱帯地方で蛇紋(じゃもん)岩が数千年以上かけて風化した「珪(けい)ニッケル鉱」として産する。
具体的な地域で見ると、硫化鉱は安定大陸からなるカナダやロシアで産出し、また酸化鉱はアジアモンスーン気候による風化作用が盛んなインドネシアやフィリピンなどで産出し、インドネシアはニッケル鉱石の生産量で世界のほぼ半分を占める。世界の資源賦存量としては酸化鉱が多いが、硫化鉱は鉱石処理後の製錬が容易であることから、生産量は酸化鉱より多い。近年では低品位のリモナイト鉱を処理する新技術が進展し、酸化鉱の生産量が増えつつある。
最大生産国のインドネシアは2020年1月から、ニッケル鉱石の輸出を禁止した。…
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週刊エコノミスト
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