再エネ需要で高値の銅 海底プレートの沈み込み地帯に鉱床/145
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国際的な銅価格が高値圏で推移している。電気自動車(EV)の普及や再生可能エネルギーの導入拡大によって、銅の需要が世界的に高まっている。銅は抵抗が小さく電気を通しやすい「導電性」に優れ、加工もしやすいといった特徴があり、供給をいかに確保するかがこれからの課題となる。
銅は古代から加工が容易な性質を生かして銅器や貨幣として使われ始めた。特別な条件下で銅鉱床として地下に濃集しており、採掘には地学の知識が必要になる。人間は長い時間をかけて銅を研究し、地殻中に有用鉱物が胚胎(はいたい)する知見を増やしてきた。
自然界で銅はさまざまな元素との化合物として産出する。具体的には、鉄や硫黄と化合した黄銅鉱(CuFeS₂)として最も多く産し、資源としても重要である。それ以外の鉱物として、輝銅鉱(Cu₂S)や斑(はん)銅鉱(Cu₅FeS₄)、キューバ鉱(CuFe₂S₃)などがあるが、産出量は多くない。
そのほか、金属のまま自然銅として産出することがあり、我が国最初の流通貨幣とされる和同開珎(わどうかいほう)は708年、武蔵国(現在の埼玉県秩父市)で大量の自然銅が産出したことを記念して鋳造された。
黄銅鉱や斑銅鉱が高濃度で含まれる岩盤は、「斑岩銅」鉱床と呼ばれ、花こう岩に銅を含む高温の熱水がしみ込んでできた。世界の銅鉱物の半分以上は斑岩銅鉱床で生産され、銅の他にモリブデン、タングステン、すず、金、ロジウムなどが微量に含まれる。
日本はすべて廃鉱
斑岩銅鉱床は海洋プレートの沈み込みによって形成されるため、南米の太平洋側やインドネシア、フィリピンで確認される。世界最大の銅産出国はチリ、次いでペルーとなっており、世界の10大銅山のうち五つがチリにある。
一般に、斑岩銅鉱床の銅含有率は0.2~0.5%ほどと決して高くはないが、銅の埋蔵量が数千万トンに及ぶ巨大な鉱山を、露天掘りの採掘でまかなっている。世界最大の斑岩銅鉱床は、チリのチュキカマタ銅山である。
日本はかつて、足尾銅山、別子銅山、日立銅山などを持つ銅の輸出国であったが、すべて廃鉱となり、現在は海外からの輸入に100%頼っている。ちなみに、銅は火…
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週刊エコノミスト
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