浅間山の地下で火山活動が始まった/144
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長野・群馬県境にある活火山、浅間山の地下で火山活動が始まった。3月15日から山体の西側で膨張を示す傾斜変動が認められ、21日から山体浅部を震源とする「火山性地震」が増加している。気象庁はこのため、23日に浅間山の噴火警戒レベルを「レベル1」(活火山であることに留意)から「レベル2」(火口周辺規制)へ引き上げ、火口から2キロメートルの範囲で噴石や火砕流に警戒するよう呼びかけている。
浅間山は安山岩からなる成層火山で、直径500メートルの火口を持つ山頂の釜山(かまやま)では常時噴気が出ている。時折、上空へ噴石と火山灰を噴き上げる「ブルカノ式噴火」を起こし、山麓(さんろく)に火山灰が降り積もることがある。
ブルカノ式噴火とは、マグマに含まれる火山ガスや水蒸気の圧力により、火口にふたをしている岩石を噴き飛ばす爆発的な噴火である。浅間山の1947年の噴火では11人の登山者が死亡したほか、2004年の噴火では浅間山から130キロメートル離れた東京都や横浜市まで火山灰が飛来し、農作物などへ大きな被害を及ぼした。
ブルカノ式噴火は大きな噴火ではないが、突然飛んでくる噴石を予測するのは難しい。このため、気象庁と防災科学技術研究所が山の斜面の傾きを精密に計測する「傾斜計」によって山体の傾斜変動の常時観測を行っている。火山は噴火が起きる前、わずかだが膨張する。その後、噴火が終了すると山は収縮するので、傾斜計はマグマの動きを知るために欠かせない。
天明噴火で大被害
浅間山はブルカノ式噴火だけでなく、過去にはさらに大きな噴火を起こしている。1783年の天明噴火では大量の軽石と火山灰を降らせた後に、火砕流と溶岩流を発生させた。溶岩流では岩なだれも発生し、ふもとの鎌原(かんばら)村(現在の群馬県嬬恋(つまごい)村)では一つの集落を丸ごと破壊して477人が亡くなった。
その後、噴火で発生した大量の土砂は吾妻川に流れ込み、激しい土石流となった。その一部が利根川と江戸川を下った結果、江戸湾にはおびただしい数の遺体が流れ着き、総計1100人を超える死者が出た。
天明噴火ではさまざまな噴出物が残されたが、それ…
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週刊エコノミスト
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