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国際・政治 チャイナウオッチ 中国視窓

台湾問題巡る呉大使の“火の中”スピーチの意味 岸田英明

 台湾問題を巡り、駐日中国大使が発した日本への「警告」が波紋を広げた。呉江浩大使が4月28日に東京の日本記者クラブで行ったスピーチの中で「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれる」(原文ママ)と発言したもので、日本政府は「極めて不適切」と抗議し、台湾の外交当局も「台湾と日本を脅迫する発言だ」と批判した。発言は、中国の日本に対する認知戦(相手国の国民や政府の認知に働きかけ、その判断や行動を変化させること)の一環と考えられる。

 呉大使は駐スリランカ大使や外交部アジア司長(局長)、部長(外相)補佐官を経て、今年3月に着任した。スピーチは、呉大使が日本や中国、海外の記者ら約200人を前に、日本語の原稿を読み上げる形で行った。約6000字のスピーチ原稿は、①「世界の平和維持と共同発展」に向けた中国の対外政策ビジョンの説明と、米中対立を受けて日中関係が「国交正常化以来最も複雑な状況に直面」する中での、②「新時代の中日関係の構築」に向けた提言──の構成だ。冒頭の警告を含む日本に台湾問題への不干渉を求めるメッセージは、②の中で約600字にわたって語られた。

 ②ではこのほか、中国ビジネスでの日本企業の成功を願ってみせたり、日本のアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」や「すずめの戸締まり」の中国でのヒットを例に挙げて、両国の、とりわけ若者同士が「文化的な共鳴や意識の共有」を持つことを紹介したりするなど、友好的なメッセージも織り交ぜた。メリハリをつけることで、警告や不満を伝える箇所を突出させ、受け手の心により強く印象付けようとする狙いが感じられた。

 スピーチ後も、呉大使は各所で要人らと面談したり、複数の会合でスピーチしたりしているが「日本の民衆が火の中に」発言は封印している。自由に発言でき、かつ、自らの言葉が最もよく拡散される場を選ぶこ…

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