チャールズ国王戴冠式の簡素化が象徴する英国君主制の今 木村正人
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チャールズ英国王とカミラ王妃の戴冠式(5月6日)が雨の中、行われた。インフレで生活が窮迫する中、国王の意向でパレードは故エリザベス女王の戴冠式(1953年)の8キロメートルから2キロメートルに短縮。「王室のスリム化」という国王の方針を示す機会になった。しかし節約した戴冠式はむしろ、欧州連合(EU)離脱、コロナ危機、ウクライナ戦争によるエネルギー危機に苦しむ英国を象徴していた。
英国の歴代君主の戴冠式は1000年以上前にさかのぼる。現在では君主が亡くなると法律により継承者が即位するため戴冠式は儀礼に過ぎないが、かつては複数の人物が王位を争うのを避けるため継承者を明確にする必要不可欠なプロセスだった。
ロンドンのウェストミンスター寺院で国王は厳かに英国と英連邦の国民をそれぞれの法律と慣習に従って統治すると誓った。国王の手や胸、頭に聖油が塗られ、ルビーやサファイアなど400個以上の宝石で飾られた聖エドワード王冠がかぶせられた。しかし、旧植民地からは贖罪(しょくざい)を求める声が上がっている。
豪州など共和制へ動き
英紙『タイムズ』は5月5日付の社説で「式典の費用と華やかさを削減するのは賢明な判断だ。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、カリブ海の島々では間もなくそのつながりを捨てて共和制に移行しそうな動きを示している」と指摘する。
チャールズ国王は故ダイアナ元皇太子妃とのダブル不倫、離婚、元妃の悲劇的な死の後、不人気な時を過ごした。君主制の廃止を求めるデモ隊もいた。しかし「戴冠式は国王と国民双方にとり、この古くからの制度がいかに国家に貢献し続けられるかを考える機会になるはず」と呼びかける。
暴露本で王室を揺るがしたヘンリー公爵(王位継承順位5位)は戴冠式が終わると長男の4歳の誕生日を祝うため、メーガン夫人の待つ米カリフォルニアの自宅に直帰。未成年者性的スキャンダルで公務から追…
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週刊エコノミスト
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