基軸通貨の「脱ドル化説」が米国で話題 代替は人民元? 岩田太郎
有料記事
世界の国々が米ドルの保有を減らしているとする「脱ドル化説」が米国のエコノミストたちの間で大きな話題だ。特に中国の人民元の台頭によるドルの基軸通貨としての地位の低下とセットで語られることが多いが、米論壇では懐疑的な見方も多い。
国際通貨基金(IMF)によると、世界の外貨準備に占めるドルの割合は2022年12月末時点で約58%と、1995年以来の低水準に落ち込んだ。
英ヘッジファンドのユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)は4月18日に発表した分析で、「為替レートの動きを調整すると、ドルは16年以降に市場シェアの約11%を喪失した。またドルは22年に、過去20年間平均の10倍の速度でシェアを落としたが、これは米国が制裁を強力に発動したためだ」と述べた。
著名な実業家で、米電気自動車(EV)大手テスラの総帥であるイーロン・マスク氏も4月25日のツイートで、「ドルを繰り返して武器化すれば、他の国はそれを使うのをやめるだろう」と述べた。
米ブルームバーグは4月26日、中国の対外決済で人民元が使用される割合がドルを抜いて48%となり、10年に同国の国際決済の83%を占めていたドルの割合は47%まで低下したとする中国政府の発表を伝えた。
トランプ前政権の大統領経済諮問委員会(CEA)のエコノミストを務めたジョセフ・サリバン氏は4月24日付の米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』電子版で、「ブラジル、ロシア、インド、中国で構成されるBRICs諸国が国際貿易においてある程度の自給自足体制を達成することが見込まれ、これらの国がドル以外の通貨で取引をすれば、脱ドル化は実現する」と予想した。
誇張に過ぎないのか
また、米投資企業ロックフェラー・キャピタルマネジメントのルチル・シャルマ会長は4月23日付の英『フィナンシャル・タイムズ』に寄稿し、「世界の中央銀行は安全資産…
残り594文字(全文1394文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める