ドイツで原発全停止 エネルギー高騰を背景に「議論は続く」 熊谷徹
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4月15日深夜、ドイツの大手電力会社3社は、バイエルン州のイザール2号機など、最後の3基の原子炉を停止したと発表した。2011年の福島事故をきっかけに脱原子力政策を加速したドイツは、約62年間続いた原子炉の商業運転に終止符を打った。ショルツ政権は30年までに脱石炭も実施し、35年までに消費電力のほぼ100%を再エネでまかなう方針だ。
ドイツの日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は4月16日付電子版で「グリーンピースなどの環境保護団体は、ベルリンやミュンヘンで集会を開き、脱原子力の達成を祝った。一方、イザール2号機を運転していたプロイセン・エレクトラ社のノット社長は『原子炉の商業運転の終わりは、私にとって悲しい出来事だ』と語った。同社の原子力部門で働く社員は今後6年間雇用を保障されるが、その後は従業員削減が始まる」と報じた。
ドイツの日刊紙『フランクフルター・ルントシャウ』は4月16日付電子版で、同国のハーベック副首相兼経済・気候保護相の「原子炉が廃止されても、我が国のエネルギー供給は保証されている。我が国はロシアの天然ガス供給停止にもかかわらず、冬を乗り切った。脱原子力が後戻りすることはない」という言葉を引用した。
ただしドイツ人の間では、脱原子力について批判的な声が強い。ドイツ公共放送連盟(ARD)のニュース番組ターゲスシャウが4月14日に公表した世論調査結果によると、「脱原子力政策は間違っている」と答えた市民の比率は59%で、「正しい」と答えた市民の比率(34%)を上回った。11年の福島事故から3カ月後に行われた世論調査では、54%が脱原子力に賛成し、反対する市民の比率(43%)を上回っていた。これらの数字は、ドイツ市民の原子力に対する考え方の変化を示す。
年齢層で割れる賛否
ARDによると18~34歳の市民の50%が脱原子力に賛成なのに対し、35歳以上の…
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週刊エコノミスト
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