“平和の建設者”を演じる中国 途上国に根深い欧米不信テコに 河津啓介
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「我々は平和の建設者だ」。中国が独自の「仲介」外交を展開している。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国に向け、米主導の秩序に代わる選択肢を示す動きとして注目を集めている。
3月、中東の覇権を競ってきたイランとサウジアラビアが外交関係の正常化で合意した。世界を驚かせたのは、米国ではなく、中国が仲介役を果たしたことだ。
元中国国防大学戦略研究所所長の金一南氏は中央人民ラジオでの解説(電子版3月21日)で「重要な外交成果であるだけでなく、我々が世界の秩序を担おうという姿勢の表れでもある。従来、表に出ずに力を蓄える『韜光養晦(とうこうようかい)』の姿勢で、紛争の調停に乗り出すことはあまりなかったが、国力の増大によって変化が生じている」と述べた。
ロシアのウクライナ侵攻についても、中国は停戦や和平交渉を促す「ポジションペーパー」を公表した。ロシアを訪問した習近平国家主席はプーチン大統領との会談でも、こうした立場を強調した。
習指導部の狙いについて、オンライン外交誌「ザ・ディプロマット」のシャノン・ティエッジ編集長は同誌の論考(3月22日)で「習氏の訪露で明らかになったのは、ロシアとの深まる関係から(世界の)目をそらすため、中国は『平和』を語っているに過ぎないということだ。ロシアに圧力をかけて真の和平提案をすることには本気ではない」と分析した。
実際、中国は、ウクライナが求める露軍の撤退や占領地の返還に言及していない。米国に対抗するため、ロシアとの共闘を重視する戦略にも変化は見られない。
バイデン米政権は、中国の提案がロシアの侵略行為の容認につながりかねないと批判するが、資源価格高騰など戦争の余波に苦しむ途上国の受け止めは異なる。
経済発展を優先し、他国の政治や人権問題に口出ししない中国の実利外交は、新興・途上国に広く歓迎されている。
むしろ欧米の「上から目線」の振る舞いが途上国…
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週刊エコノミスト
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