米国発の金融不安めぐり「自己修正機能が不在」とスティグリッツ氏 岩田太郎
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米国のシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行が3月に破綻し、同国の銀行不安が欧州に飛び火するなど、世界に金融不安が拡大した。当局の預金保護などで事態は落ち着いたが、危機の本質や銀行規制のあり方、規制当局の失敗について米エコノミストたちが分析している。
金融危機を扱ったベストセラー『世界恐慌─経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』の著者であるライアカット・アハメド氏は3月26日付の米紙『ワシントン・ポスト』で、「完全に安全な金融システムは永遠にあり得ないため、今回のような危機はシステム自体に内包されている」と語った。
また、英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長であるモハメド・エラリアン氏は3月27日の米経済専門局CNBCの番組に出演し、次のように指摘した。
「インフレと経済成長と金融の安定は、国際金融において三つを同時に実現できないトリレンマを構成しており、そこから逃れることはできない」
翻って、世界銀行の前チーフエコノミストであるカーメン・ラインハート氏は前述のワシントン・ポストの記事で今回の金融不安を地震にたとえて、「そこかしこに断層が存在するにもかかわらず、無頓着さの蔓延(まんえん)でシステムが脆弱(ぜいじゃく)になっていた」と述べ、当局者たちが予兆に十分な注意を払っていなかったと示唆した。
同じく世界銀行の元チーフエコノミストでノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏(米コロンビア大学教授)も同記事で、「われわれはより脆弱でショックを集中して浴びる経済システムを作り上げてしまった。システムが自己修正機能に欠けるため、より重大な結果をもたらす」との見解を示し、経済の仕組みの設計を見直す必要性に言及した。
米連邦準備制度理事会(FRB)元国際金融局長のネイサン・シーツ氏は同記事で、「今回のような危機はグローバル化と世界的な結びつきの産物だ。危機が発生すると世界…
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週刊エコノミスト
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