戦う前から迷走する立憲民主党 ふらついているのは泉氏だけか 与良正男
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広島市で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)が終了し、政界の関心は岸田文雄首相がいつ衆院を解散し、総選挙に踏み切るかに一段と集中してきた。
今の通常国会の会期は6月21日まで。会期中、あるいは会期を延長して解散か。それとも内閣改造をしたうえで秋の臨時国会で解散か。いずれにしても決戦の日は近づいている。
そんな状況であるにもかかわらず、戦う前から迷走しているのが立憲民主党だ。
泉健太代表は5月12日の記者会見で、次の衆院選について「立憲は政権を目指す政党だ。150は必達目標だ」と語り、次の衆院選で150議席を取れなければ代表を辞任すると明言した。
自ら退路を断つ決意を示そうとしたのか。このままでは野党第1党の座を日本維新の会に奪われるという焦りなのか。
だが、立憲が前回の2021年衆院選で獲得したのは96議席に過ぎない。
このため党内では「不可能に近い数字だ。なぜ突然、こんな高いハードルを持ち出したのか、理解できない」「これでは代表を辞めたいと言っているようなものだ」等々と、かねてからあった泉氏への不満が、かえって増幅する結果となった。
非現実的な「150」議席
泉氏が代表に就任したのは、2021年11月。しかし、昨夏の参院選では、改選前から6議席減らし、比例票は維新を下回る約670万票しか取れなかった。
そして先の衆参5補欠選挙では公認候補を出した3選挙区で全敗……。ここで泉氏が引責辞任しなかったことが、今の混乱につながっている。
「泉氏がいい人だ、ということは党内の誰もが認めている。だが腹がまるで据わっていない」と元執行部の一人は言う。
今回の発言は、衆参5補選の総括のため5月10日に開いた両院議員懇談会で、出席議員から「代表としての覚悟を示してほしい」と厳しい注文が出たのが発端だ。蓮舫参院議員が「一番変わらないといけないのは代表の認識だ」となじる場面もあったという。
実際には、立憲の次期衆院選の候補予定者は、まだ140人程度で、単独で政権を取るには程遠い数字にとどまっている。
候補者擁立を着実に進めるのが先なのに、相次ぐ批判に過剰に反応して、いきなり非現実的だと思われる数字を口にしてしまった──というのが実相だろう。
唐突なのは「150人」発言だけではない。泉氏は5月12日の記者会見で、昨秋から続けてきた日本維新の会との国会での連携を打ち切る考えを示して、「(維新に)自民党に対抗する姿勢が見られなければ、立憲として独自の道を歩んでいく」とも語っている。
その後のBS番組では「選挙はまず独自でやるものだ」と、次の衆院選では、維新のみならず、共産党との選挙協力も「やらない」とまで口にした。いずれも執行部の中で十分に検討したうえでの発言だったようには見えない。
そもそも維新との連携は岡田克也幹事長と安住淳国対委員長が主導したものだ。共闘の解消も先に言い出…
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週刊エコノミスト
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