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脱炭素に不可避な「二重の外部性」をGX債で解決する 小林航

GX実行会議で発言する岸田文雄首相(右端、首相官邸で2022年12月22日)
GX実行会議で発言する岸田文雄首相(右端、首相官邸で2022年12月22日)

 政府が新たに発行するGX経済移行債(GX債)。どのような狙いから発行されるのか。

国債で前借りする財源で脱炭素技術を革新

 政府は2023年度予算において、脱炭素成長型経済構造移行債、通称、GX債という名の新しい国債を発行する。

 GXとは、グリーントランスフォーメーションの略であり、2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」(GX基本方針)では、「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する」ことと説明されている。目指しているのは脱炭素という国際公約の達成と産業競争力の強化を通じた経済成長の両立であり、GX債はそれを実現するための手段として位置づけられている。

10年間で20兆円規模

 GX債の根拠法となる「GX推進法案」では、政府がGX債を発行できるのは32年度までの10年間とされており、GX基本方針では、その10年間で20兆円規模のGX債を発行するとしている。調達した資金は、GXに向けた投資促進のために支出するとともに、今後、徴収が開始される予定の化石燃料賦課金と特定事業者負担金という二つの財源によって50年度までに償還されることになっている。

 このうち化石燃料賦課金とは、化石燃料の輸入事業者等を対象に二酸化炭素の排出量に比例して徴収するものであり、28年度からの導入が予定されている。また、特定事業者負担金とは、排出量の多い発電事業者を政令で特定事業者と定めたうえで、二酸化炭素の排出枠の一部を有償で割り当てる際に徴収するものであり、33年度からの導入が予定されている。

 これらはGX基本方針にも記載されているように、二酸化炭素の排出に価格付けを行うカーボンプライシングの手段として導入されるものであり、そこで発生する将来の財源を裏付けとして発行されるのがGX債ということになる。

 環境経済学の理論において最も重要な概念といってよいのが外部性である。外部性とは、ある個人や企業の行動が市場を経由せずに他者に影響を及ぼすことであり、それが良い影響である場合には正の外部性(もしくは外部経済)、悪い影響である場合には負の外部性(もしくは外部不経済)という。ある行動が外部性をともなう場合、その行動がもたらす社会的便益や社会的費用が意思決定の際に十分に考慮されないため、社会厚生が最大化されないという意味で非効率的な資源配分が実現する。

 多くの環境問題は負の外部性に起因する資源配分問題であると考えられる。つまり、環境被害につながる汚染物質を排出する個人や企業が、その社会的費用を十分に考慮せずに行動するため、汚染物質が過剰に排出されてしまう、と考えるのである。

 その解決策として提起されてきたのが、当事者が考慮する私的費用と社会的費用の差を外部費用と定義し、その外部費用の大きさに相当する課税を行うというものである。これは提唱者の名にちなんでピグー税と呼ばれている。地球温暖化問題を負の外部性に起因する資源配分問題ととらえ、その主要な原因物質である二酸化炭素の排出量に応じて課税する炭素税は、その典型的な応用例である。

 それでは、炭素税を適…

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