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週刊エコノミスト Online ノッポさん

追悼 高見のっぽ おチビちゃんが大好きだった「ノッポさん」 浜條元保

サービス精神満点だったノッポさん(撮影当時84歳)
サービス精神満点だったノッポさん(撮影当時84歳)

 私は大切にしている名刺が1枚ある。ノッポさん(高見のっぽ)のそれだ。

「大きくなったね、おチビちゃん。どれどれ」。初めて会った「生ノッポさん」は、おもむろにペンを走らせると、自分の名刺に、イラストとサインをしてくれた。

「今日は、ノッポさんのすべてをお話ししましょう。おチビちゃんたち、ちゃんと聞けるかな」

 NHKの工作番組「できるかな」の、ノッポさんの2時間近くに及ぶロングインタビューが始まった。2018年9月のことである。

 そのノッポさんが、22年9月10日に亡くなっていたことが23年5月10日、分かった。享年88歳。

「♪できるかな、できるかな♪」。自宅や幼稚園、小学校のテレビから流れてくるオープニングソングを懐かしく思い起こす読者もいるだろう。1970年から90年までの20年間、ノッポさんは日本中の子どもを夢中にさせた「できるかな」の主人公を務めた。

 181センチの長身にチューリップハットとサスペンダー、パンタロン姿がお決まりの衣装。言葉は一言も発せず、身近な素材を使ってロボットや動物、乗り物を作って、相棒の人形「ゴン太君」を驚かせたり、一緒に遊んだりする、当時としては斬新な造形番組だった。

 番組で見せる優しくおちゃめな表情やまなざし、目の前にいるノッポさんからも、それがにじみ出ている。その原点はどこにあるのか。インタビューで分かったのは、両親はもちろん、歳の離れた兄姉から愛情たっぷりに育てられたから。

しゃべっちゃった「最終回」

「舞台俳優だった父親は、『この子はできる子』と根拠不明な信用、信頼を私に対してずっと持っていました。母親と兄は『頑張れ、頑張れ』といつも応援してくれる。高校を出て、父親の『カバン持ち(秘書兼助手)』をしながら、俳優を目指すためのバレエや声楽を習う費用として姉は毎月3000円を出してくれました」

 ある番組の最終回に男性ダンサーが1人足りないからと、ノッポさんに声がかかり、そのダンスを偶然見ていたNHKのプロデューサーとの出会いが「できるかな」につながる。

 どうしても聞きたいことがあった。「できるかな」の最終回、ノッポさんがしゃべっちゃった理由である。自身が振り返る。

「最終リハーサル。私がスタッフに『自分の声でサヨウナラってやるさ』と宣言すると、『えっ、やめて』と悲鳴に似た声が上がりました。収録前に今まで不要だったピンマイクを胸につける私を、スタッフは見てはならぬものを見てしまったというような、浮かない表情で見守っていました」

 そして、いよいよ最後の瞬間。

「今まで長い間、ありがとう。それでは皆さん、サ・ヨ・ウ・ナ・ラァ!! うわっ、しゃべっちゃった!!」

 しゃべることのあってはならない番組で、この「しゃべっちゃった!!」は、ノッポさん流のお別れを告げる言葉だったのである。

 最後の言葉が印象的だった。

「私は小さいひとが好きです。だからこう言うのさ、『あのね、このおじいさん、ここまで長く生きてきてさ、いろいろとあったんだよ。でね、君たちもこれからいろいろあると思うんだよ。でも、このおじいさんが見ているからさ」。合掌。

(浜條元保・編集部)


週刊エコノミスト2023年6月13日号掲載

追悼 高見のっぽ おチビちゃんが大好きだった「ノッポさん」=浜條元保

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