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カーニバル 世界最大のクルーズ船運航会社 永井知美

メキシコ中部マサトランの港に接岸したカーニバルのクルーズ船(Bloomberg)
メキシコ中部マサトランの港に接岸したカーニバルのクルーズ船(Bloomberg)

Carnival 旅行需要の回復に期待/80

 カーニバルは米州、欧州、オーストラリア、アジアでクルーズ船を運航する米大手だ。調査会社のクルーズ・マーケット・ウオッチによれば、クルーズ業界の乗客数シェアは2021年、カーニバルは42%で首位だった。2位の米ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(24%)、3位の米ノルウェージャンクルーズライン(10%)を大きく引き離している。22年11月期の部門別売上高比率は北米・豪州クルーズ68%、欧州・アジアクルーズ29%、その他サービス3%だった。

 カーニバルは1972年、イスラエル出身の実業家、テッド・アリソンが設立した。この頃、長距離移動の手段は客船から航空機にすでに移行していた。アリソンはクルーズ船を単に目的地への移動手段ではなく、「富豪しか経験できなかったバケーション(休暇)を普通の人に広げる」という夢を持ち、実現した。ショーなどのエンターテインメントや食事を楽しみ、風光明媚(めいび)なカリブ海や地中海を周遊する船旅だ。

 当初は中古船を改造していたが、82年以降は新造船を次々と導入した。世界のクルーズ市場は新型コロナの感染拡大前、料金が低下したことで客層や乗客数が拡大基調にあったが、何年に一度かは戦争、テロ、景気悪化、感染症などの影響を受けて需要が急減することもあった。カーニバルは業績の悪化した同業他社を次々に傘下に収め、高価格帯にも参入した。現在、「カーニバルクルーズライン」「プリンセスクルーズ」など価格帯や拠点港などが異なる九つのブランドを展開する。同社のウェブサイトによれば、93隻を運航する(今年5月26日現在)。

クラスター発生

 日本では同社はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の運航会社といったほうが分かりやすいかもしれない。20年2月、横浜港に入港し、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した船だ。その後、他社も含めてクルーズ船の船内感染が相次ぎ、カーニバルは同年3月以降、運航をほぼ全面的に停止した。その結果、20年11月期から22年11月期まで、3期連続で大幅な純損失を計上している。

 クルーズ業界に薄日が差したのは、欧米を皮切りに運航が徐々に再開した21年半ば以降だ。欧米の旅行需要は回復が早い。その趨勢(すうせい)を受け、カーニバルの客室稼働率は22年12月~23年2月期の91%から、今夏には100%超を見込む。

 クルーズ運航会社は船を運航しつつ、豪華ホテル並みの船室、食事、エンタメを提供するため、独自のノウハウを必要とする。不況期には資金調達の手腕も問われる。そのような特殊性から、クルーズ業界は上位3社が乗客数の8割を担う寡占状態となった。

年平均成長率は11%

 カーニバルの業績は最悪期を脱しつつある。22年12月~23年2月期の連結決算は売上高が前年同期比2.7倍と大幅に増えた。コロ…

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週刊エコノミスト

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