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難しい景気判断 正念場の米金融政策 渡辺浩志

 米国の経済指標のばらつきが拡大している。足元の景気を表す指標(雇用・所得・消費・サービス物価など)は強い。これらを集計した「景気一致・遅行指数」には過熱感すら漂う(図1)。

 一方、将来の景気を映す指標(新規受注・住宅着工・マネーサプライなど)は弱く、「景気先行指数」は悪化している。この3指数の方向感がいまほど大きく乖離(かいり)することは異例であり、これが市場参加者や米連邦準備制度理事会(FRB)の景気判断を迷わせている。

 景気一致・遅行指数の強さは金融引き締めが後手に回っていることを象徴するものでもあり、FRBに利上げを促すとともに、短期金利を押し上げる。一方、厳しい金融引き締めは先々の景気後退への警戒をあおり、長期金利を押し下げる。その結果、米国の逆イールド(長短金利差のマイナス幅)は過去30年の最大幅となった。

 逆イールドの拡大は銀行の預貸利ざやの悪化を意味し、貸し出し態度の厳格化を招いている。家計・企業の資金繰りが厳しさを増すことで、米国は年内にも景気後退に陥ると見込まれる。

 ここに米地銀の破綻に伴う金融不安が重なっている。一連の破綻劇は流動性リスクの管理を怠った個別行の問題といわれる。だが、多くの銀行が保有債券の含み損の膨張や預金流出に直面しているように、金融不安は利上げ…

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週刊エコノミスト

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