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法務・税務 FOCUS

電力カルテル3社の株主が損賠提訴を各社に請求 横並び体質を崩す一歩にも 和田肇

課徴金を免れた関西電力の株主も賠償請求訴訟の提訴を請求している(大阪市の関西電力本社)
課徴金を免れた関西電力の株主も賠償請求訴訟の提訴を請求している(大阪市の関西電力本社)

 電力カルテル問題に関連して、関西、中国、九州各社の個人株主らが6月7日、各社の監査担当役員に当時の経営陣に対して損害賠償を求める訴えを起こすよう請求したと発表した。中部電力についても提訴を請求する方針で、請求を受けた各社が60日以内に提訴しなければ、会社法の規定に基づいて株主代表訴訟を起こすという。

 電力カルテルを巡る独占禁止法違反(不当な取引制限)問題では、公正取引委員会が今年3月、中国、九州、中部の3社と子会社1社に対し、総額1010億円超の課徴金納付命令と、再発防止を求める排除措置命令を出している。課徴金は過去最高額となる。一方、関西電力は公取委の調査前に違反を自主申告したため、課徴金減免制度(リーニエンシー)によって処分を免れている。

 公取委の排除措置命令などによれば、関電は遅くとも2018年11月までに、中国、九州、中部の3社と子会社1社との間でカルテルを結び、互いの供給区域で大口顧客向けの営業活動を制限したり、官公庁の入札で安値入札しないことなどに合意。こうしたカルテルにより、それぞれの供給区域で電気料金の水準を維持したり、上昇させたりしていたことが確認されたという。

 個人株主らは、中国電力に対しては当時の役員に約808億円、九州電力には約260億円の損害賠償を求める訴えを提起するよう請求。また、関電に対しても、カルテルに関与したり黙認したりした過失のほか、高い電気料金を払わされた顧客に対する賠償などとして、当時の役員に総額3508億円の賠償を求める訴えを起こすよう請求している。中部電力に対しても303億円程度の賠償を求める見通し。

公取委は「入念調査」

 関西、中国、九州電力とも、個人株主らの請求に対し「対応を検討する」としているが、公取委の命令に対しては中部電力がすでに取り消し訴訟を起こす方針を決めているほか、中国、九州電力も取り消し訴訟を検討している。ただ、独禁法に詳しい東京経済大学の中里浩教授は「公取委はかなり入念に調査したうえでカルテルを認定しており、関西電力は課徴金減免申請をしている。認定が覆るとは考えにくい」と話す。

 カルテル問題の背景にあるのが、日本の電力会社独特の“横並び体質”だ。00年から始まった電力小売りの自由化以前は、規模や発電所数の違いこそあれ、「金太郎あめ」と揶揄(やゆ)されるほど、どの会社もほぼ全く同じ経営・事業体制だった。これは電気事業法で、地域独占体制とともに事業のやり方が細かく決められていたことにも由来する。横のつながりが強く、各社間の交流も盛んな業界だった。

 今回のカルテル問題は、表向きは自由化による競争を掲げていても、そうした電力業界の体質は変わっていないことをさらけ出した。訴訟などで今後、役員個人への責任追及が進めば、電力業界の旧態依然とした体質を一変させる可能性もある。

(和田肇・編集部)


週刊エコノミスト2023年6月27日・7月4日合併号掲載

FOCUS 電力カルテル 会社側に役員への損害賠償請求 株主が突き崩す横並び業界体質=和田肇

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