教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

火星の最深部は地球と同じ「核」だった/150

火星で活動するNASAの探査機「インサイト」=NASA提供
火星で活動するNASAの探査機「インサイト」=NASA提供

進展する火星の探査/上

 火星は太陽系の中では金星と同じく地球の近傍にある惑星で、長年研究が進んでいる。米航空宇宙局(NASA)は火星の内部構造を解明する目的で探査機「インサイト」を開発し、2018年11月に火星のエリシウム平原の着陸に成功した。

 その後、超高感度の地震計を設置し、19年4月に史上初めて火星で地震(火星なので「火震」とも呼ばれる)を観測して以来、22年12月のミッション終了まで合計1319回の地震を検出することに成功した。

 一般に、地球内部では岩盤がストレスを受けて割れることで地震が発生する。割れた場所には断層ができ、繰り返し動くことでその後も地震を発生する。火星の場合も同様で、宇宙空間に熱を放出して冷える過程で、表面が縮んで引っ張られる。このストレスによって岩盤が割れ、地震が発生すると考えられている。

 火星は地球ほど動きが活発でなく、最大規模の地震は22年5月4日に観測されたマグニチュード(M)4.7である。一方、地震計は火星の表面に隕石(いんせき)が衝突した際に生じる揺れも検出し、これまで複数の衝突クレーターが特定された。

2年の観測で特定

 さらに、火星で発生する地震を数多く集めることで、地下の様子を詳しく知ることができる。地球の内部構造を知る際にも同じ方法を使うのだが、地震波の速度や波形の違いから、通り道に固体があるか液体があるかを判別する。その結果、火星の最深部には地球と同じ「核」が存在することが分かり、その上にある「マントル」や「地殻」の厚さなどの詳細が明らかになった。

 火星の表面には厚さ約20~40キロメートルの地殻があり、その下に厚さ約1600キロメートルのマントル、最深部に半径約1800キロメートルの核があることが分かった。また、マントルは固体だが核は液体からなるので、半径約3400キロメートルの火星の中央半分は溶けていることになる。なお、火星の2倍サイズの地球では、固体の内核の周囲を液体の外核が取り巻いている(本連載の第99回を参照)。

 地球と火星はいずれも約50億年前に誕生した太陽系の惑星として同じ歴史をたどってきた。約40億年前まで、直…

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