火星は地震・火山がある“生きた”惑星だ/151
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進展する火星の探査/下
火星の内部が表面から地下に向かい「地殻」「マントル」「核」という3層構造を持つことは、火星探査機インサイトによって明らかになった(本連載の第150回を参照)。一方、火星の表面には地球のように水平に移動するプレート(岩板)がなく、表面の物質が絶えず置き換わることはないと考えられていた。
地球上では表面を覆う11枚ほどのプレートによる運動が、地震や火山噴火を引き起こしている。一方、プレートのない火星でもオリンポス山のような巨大な盾状火山がある。しかし、火星で活発な火山活動が起きていたのは今から30億~40億年前で、最近の活動は未解明だった。
探査機が持ち込んだ地震計で観測すると、「ケルベロス地溝帯」と呼ばれる地域で地震が頻繁に発生していることが分かった。この地域はかつての火山地帯でもあり、最近数百万年の間に溶岩が流れた証拠もある。
また、火星の北半球に広がる「エリシウム平原」では、2億年ほど前に大規模な噴火が発生し、他の地域と異なる平原を作っている。ケルベロス地溝帯は、このエリシウム平原に生じた長さ1300キロメートルの割れ目の集合体で、この地域が現在も活動中である可能性が出てきた。
低地が広がる火星の北半球の中でも、エリシウム平原は標高が高い特徴があり、地下深部の原因で地形的に隆起した可能性がある。そこで、エリシウム平原の地形と重力を詳細に分析すると、この地下に高温の「マントルプルーム」が存在する可能性が高いことが分かってきた。
すなわち、隆起の原因は地下から密度の小さいマントルプルームが地表を押し上げていることで説明できる。そもそも、地溝帯とは地面が溝状に窪(くぼ)んだ地形を表す用語で、ケルベロス地溝帯の地下に幅4000キロメートルの巨大なマントルプルームがあるらしい。
洪水が起きた証拠も
地球ではマントル内部で高温のホットプルームと低温のコールドプルームが循環し、マントル物質を循環させている。両者を合わせたマントルプルームの運動は「プルーム・テクトニクス」と呼ばれている(本連載の第39回を参照)。
具体的には、約1億年という長い時間軸でプルーム活…
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週刊エコノミスト
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