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経済・企業 完全復活!第94回都市対抗

応援も特定試合シードもコロナ前と同じ にぎわい取り戻せ(編集部)

都市対抗は説明のいらないシンボル
都市対抗は説明のいらないシンボル

 声出し大応援の再開、物産展のイベントや特定シードの復活など、コロナ前の大会に完全復活する。選手、観客、関わる人すべてがこの姿を待ち望んでいた。かつての盛り上がりや白熱した戦いが期待される。

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 新型コロナウイルス禍とそれに伴う経済の悪化で、これを機に改めて企業スポーツ、ひいては都市対抗野球の在り方が問われてきた。しかし世の中が正常化に向かう中、企業スポーツが果たす役割はある。

「企業スポーツは、社員に自社グループを感じてもらう、説明の要らないシンボルだと思う」。そう語るのは2年連続6回目の出場となるJR西日本の長谷川一明社長だ。

「特にコロナ禍は社員にとって、つらい3年間だった。今年も本選出場を勝ち取れたので、東京ドームに応援に行って、みんなで盛り上がって頑張ろうという感じにしていきたい」と期待する。

 今年の都市対抗の特徴はかつての華やかさ、にぎやかさを取り戻すことだ。そのベクトルが強くなった都市対抗が企業活動に与えるプラスの影響は大きいだろう。

 まず出場チームの地域の物産展が土日祝日に開催される。さらに子供の自由研究向けに、野球殿堂博物館見学、球場のバックヤードツアーなどのイベントを予定。

 そして、都市対抗名物の声出し応援が完全復活する。1回戦限定で応援合戦のライブ配信を行う他、応援団にフォーカスする演出を行う予定だ。

 勝敗を左右する動きとして、今年は特定試合シードが4年ぶりに復活した。特定シードは大会を盛り上げるために、一定数以上(今年は1万人以上)の集客が見込まれることを条件に事前申請したチームの試合を指定の日時に割り振る制度である。07年から始まったが、コロナ禍で集客を制限した20年以降は導入されていなかった。

 例えば、地方のチームは応援にかけつけやすい休日の試合を希望する。しかし、チケットの販売がチームの負担になったり、動員しやすい首都圏のチームが都合の良い枠をとったりする動きもあり、賛否両論ある。また、申請したチームが希望する日時に試合をするため、トーナメント戦の1回戦の試合順は必ずしも、トーナメント表の上から順番とはならない分かりにくさがある。

 今回は、14チームが特定シードを申請し、そのうちトヨタ自動車とHonda、Honda熊本と西濃運輸、パナソニックとJR西日本、SUBARUとJFE西日本、JR東日本東北と日本生命がそれぞれ同じ日時を希望したため、1回戦で対戦する。

黒獅子旗を受け取るのはどのチームか(昨年優勝した横浜市・ENEOS)
黒獅子旗を受け取るのはどのチームか(昨年優勝した横浜市・ENEOS)

 前回優勝のENEOSは7月14日の開幕戦となる。トヨタとHondaのカードがENEOSのすぐ下の山に決まった時には、抽選会場が最も沸いた。前回覇者のENEOSと昨年の社会人野球日本選手権優勝のトヨタが早くも2回戦で激突する可能性があるためだ。過去3回優勝しているHondaが、初戦を突破してきても手ごわい。大会は序盤から白熱しそうだ。

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補強選手にも注目

 都市対抗野球独特のルールとして補強選手制度がある。各地区の代表チームが同じ地区の予選で敗退したチームの中から最大3人まで選手を借りることができる。

 代表チームにとっては弱点を補強するだけでなく、大幅な強化につながることもある。また、選手にとっても本大会に出場できる上、連続出場の表彰の条件をクリアできるメリットがある。

 地区の上位代表のチームから優先して補強選手を選ぶことができるため、上位で代表になると補強選手の選択でも優位になり、他チームの主力選手を補強できる。例えば、今大会の東京第1代表の明治安田生命は「鷺宮製作所のエースと4番打者、NTT東日本の4番打者を補強する」(岡村憲二監督)という。

 一方で補強選手制度ならではの事象として、同じグループ企業の選手が別チームとして戦うこともありうる。今大会で東海地区第1代表のトヨタは、予選で敗退したHonda鈴鹿の2選手を補強。1回戦でHondaと対戦するため、Honda鈴鹿の選手がトヨタのユニフォームを着て戦う。

 また、東海地区第5代表の西濃運輸もHonda鈴鹿の選手を補強した。1回戦でHonda熊本と対戦するため、同じ企業グループの選手が、別チーム(西濃運輸)の選手としてぶつかる。

 なお、前回優勝チームは補強選手を獲得できない。ここが都市対抗で連覇が難しい要因の一つとなっている。前年優勝のENEOSは補強選手なしで臨む。また、補強選手制度は無理に使わなくてもいい。ENEOSと同じ西関東地区の三菱重工Eastと東芝は補強選手制度を活用しない。この2チームの戦いにも注目だ。

 都市対抗野球は、東京日日新聞(現毎日新聞)の橋戸頑鉄氏らが、米大リーグにならって全国の企業チームやクラブチームを各都市の代表として集めた大会を開こうと奔走。1927年8月、全国から12チームを神宮球場に集めて第1回全日本都市対抗野球大会が開催された。94回大会はコロナを乗り越え、新たな歴史の扉を開く。

(村田晋一郎・編集部)


週刊エコノミスト2023年7月11日号掲載

第94回都市対抗野球 コロナ前へ 次々と復活するイベント 華やかさ・にぎわいを取り戻す=村田晋一郎

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