日本は危機感持ち現実直視を ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正さん
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創刊100周年 編集長特別インタビュー/4 経済の衰退傾向から「失われた30年」を過ごした日本。再び世界に打って出るために、何が求められているのか。地方の小さな企業を、世界有数のファッションブランドに導いたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(74)に聞いた。(聞き手=岩崎誠・本誌編集長、構成=安藤大介・編集部)
── 会議室の壁に掛けられている世界地図がお気に入りだと聞きました。
柳井 面白いんですよ。米国が中心に描かれていて、日本は「ファーウエスト(極西部)」になっている。欧州から見たら、「ファーイースト(極東部)。世界がいかに自国中心かが分かります。当社の前の会長からもらったものです。
── その世界を見渡せば、地球温暖化や貧困、格差、分断など、未来に向けたさまざまな課題があります。そうした中での持続可能な経営とは、どういうものだと考えますか。
柳井 そもそも経営とは持続可能であることを前提にしているじゃないですか。「ゴーイングコンサーン」(企業が将来にわたって継続していく前提)といいますね。持続可能にしようと思ったら、グローバルの視点で良識を持って経営していくことが大事だと思います。問題がどういうことなのかを直視しながら、理想を追うというような。何か矛盾しているようですが、こうしたことを経営者としてやる必要があると思います。
G7ばかり見るな
── 南半球の途上国・新興国を中心とする「グローバルサウス」も存在感を増しています。
柳井 当然のことです。あの(飾られた)世界地図にないような国がたくさんできて、それぞれ主張をし始めた。インターネットやスマートフォンの普及で情報がすぐに伝わるようになり、今までの先進国中心の世界から、世界中の国が参加するような世界になったのです。それぞれの国が、特に東南アジアの国々が力をつけてきた。全ての枠組みを変えていかないといけないのだと思います。
── 日本や先進各国はどのように進むべきでしょうか。
柳井 「分断」をしたらいけないと思います。特に日本は、あまりにもG7(主要7カ国)の立場に立ち過ぎですね。G7に寄ったものだけやると、(対立する立場の国々にとっては)屈辱を感じるものになりかねない。そうしたことも、よく考えないといけない。
── 日本は中国と、どう向き合うべきでしょうか。
柳井 共存共栄しかないでしょう。互いが政治の犠牲にならないよう…
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週刊エコノミスト
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