米経済は失速せずインフレ沈静、利上げなしも 藤代宏一
米国経済は、景気の急減速を回避し、なおかつインフレ沈静化に成功するという最も理想的な展開が到来しつつある。
5月の消費者物価は食料とエネルギーを除いたコアCPIが前年同月比5.3%と高止まりしたものの、総合CPIはエネルギー価格の下落を背景に同4.0%まで低下した。また米連邦準備制度理事会(FRB)の懸念材料の一つである賃金の異常値的な上昇が終息する兆しも見えてきた。
たとえば、平均時給と一定の連動性があることが知られる全米独立企業連盟(NFIB)中小企業調査の調査項目の人件費計画は、直近数カ月、低下基調にある。また転職活動の活発度合いを示す自発的離職率が低下基調にあることも重要だ。離職率の低下は人材獲得競争を緩和させ、労働コストへの低下圧力をかける(図1)。
この間、消費者の予想インフレ率(ミシガン大学調査)は5~10年先が安定を維持する中、1年先が急低下している。ガソリン代の値下がりや食品価格の上昇一服が予想インフレ率の下押しに寄与したとみられる。
生産は再び活発化
このようにインフレが沈静化に向かう中、製造業のいくつかの指標は最悪期を脱出する兆候が認められる。
米国の代表的な経済指標のISM製造業景況感指数は5月に46.9と、依然として好不況の分かれ目となる50を下回っているが…
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週刊エコノミスト
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