金額で日本貨物の4割占める海上コンテナは世界経済でも不可欠な存在 藤原秀行
有料記事
『コンテナから読む世界経済』
著者 松田琢磨さん(拓殖大学教授)
大量かつ効率的にモノを運ぶ海上コンテナ輸送の奥深さ
新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の物流が混乱し、企業のサプライチェーンが寸断したのを契機に注目度が高まっている海上コンテナ。本書は海運業界に精通した研究者が、この一見地味な金属製の箱が実は荷物を大量かつ効率的に運ぶ手段として、世界経済に不可欠な存在であることを解説した入門書だ。
著者は海事関係の調査研究や政策提言などを手掛ける公益財団法人の日本海事センターで主任研究員を務めた後、大学教授となった。
「同センターではリポート作成などを通じて海運業界の人たちと接する機会が多く、さまざまなことを教えてもらって知識を蓄えていきました。ちょうど、中国経済の急速な発展に合わせてコンテナ輸送が伸びていたことも海運領域への関心を深め、海運研究の道に進むことを決心する契機となりました」
今年2月には『日本海事新聞』のベテラン記者、幡野武彦氏と共同で、日本の海運大手3社が生き残りをかけてコンテナ船事業を統合・分社化した「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」(ONE)が業績を急回復させる快進撃を追った『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』(日経BP、1980円)を上梓(じょうし)。海運業界にテーマを絞ったものとしては本書が第2弾となる。
「前作は日本の伝統的企業が再生するに当たって進むべき方向性を示すことに力点を置いたのに対し、本書は予備知識を持っていない一般の読者を対象に、海上コンテナ輸送のことを正しく理解してほしいとの思いで書き上げました」
その言葉通り、海上コンテナが広く普及している実態をデータで紹介。例えば、世界では1年間に約8億個分(20フィート標準コンテナ換算)のコンテナが港で積み下ろしされ、2021年には日本の輸出入貨物のうち金額ベースで約4割が海上コンテ…
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週刊エコノミスト
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