人出回復でも景気は足踏み 消費マインドの低迷背景か 久保和貴
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中国が2022年末、新型コロナの感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ政策」を電撃的に解除したことを受け、中国経済がコロナのダメージから本格回復するか焦点となった。ただ、現在では否定的な見方が広がっているようだ。足元では、政府による景気支援策が期待されるまでに市場関係者の期待はしぼんでいる。
筆者は今年3月に上海に赴任し、中国がリオープン(経済再開)するかを観察してきた。市内を見る限り人流は大きく回復し、観光地は写真を撮るインフルエンサー(網紅(ワンホン))で埋め尽くされた。夜にはプロジェクションマッピングが高層ビル群を彩り、文字通り「街が生きている」という印象を持った。
上海では現在、日本に関連した消費が盛り上がりを見せている。6月には日本の回転ずしチェーン「くら寿司」が中国大陸最初の店舗を構えたほか、中心部では日本のゲームを題材にしたコンセプトショップが新たに開店した。日本のキャラクターのコスプレをする中国人も散見される。
6月の端午節連休は、湖南省長沙市を訪問した。同市は人口1000万人を超える中国有数の大都市で、13年以降は北京や上海に次ぐ「新一線都市」に位置付けられた。上海に劣らぬ活気に満ち、繁華街は非常ににぎわっていた。「ご当地グルメ」の店舗には長い列ができ、人気の「映えスポット」にはスマホや自撮り棒を握りしめた観光客が押し寄せた。
中国に来てからの3カ月間は、どこに行ってもヒト、ヒト、ヒトという印象だった。中国景気の復活は現地で見る限り確かなものに思えた。ただ、冒頭に述べた通り、経済指標は市場予想に比べると弱めの動きが続いている。筆者が見聞きした「強い人流」と、「弱含みの経済指標」をどうしたら整合的に解釈できるか、頭を抱えているのが正直なところだ。
「2軒目」消費不発?
そのヒントがあった。前述の端午節連休について、中国文化観光省は国内旅行者数が19年同期を12.8…
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週刊エコノミスト
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