観光業はV字回復でも“安・近・短”の様相 奥山要一郎
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中国を代表する青島ビールを楽しめる「青島国際ビール祭り」が、7月14日から8月6日まで開かれ、筆者も訪れた。会場は青島市の新興開発エリア、西海岸新区(黄島区)にある金沙灘啤酒城。東京・日比谷公園の約5倍に当たる会場(80万平方メートル)に設けられた大型ビアホールやブースで、青島ビールだけでなく中国内外の2000種以上を味わえる。
初日の入場者数は約2万4000人と公表されたが、現地ではこれ以上の混雑ぶりを感じた。派手な歌やダンス、盛大な花火ショーが繰り広げられた開幕式はさながらフェス状態。ほろ酔い気分の筆者もその壮大さに圧倒された。会場には左党ばかりでなく、夏祭りを楽しむ家族連れも多かった。乗り合わせたライドシェアの運転手は「昨年はコロナの影響で期間が短縮され、散々だった」とこぼしたが、今年の出足には満足そうだった。
実際、中国の観光業界はV字回復を遂げている。中国文化旅遊部によると、今年上半期(1~6月)の国内旅行者数は延べ23億8400万人に上り、前年同期比で63・9%増加した。同部は今年初め、通年では「コロナ前」の70~75%の水準まで回復すると見込んでいた。2019年の約60億人から換算すると45億人程度に相当する。秋の国慶節連休なども控えており、この見通しを上回る勢いだ。
一方、財布のひもがやや固くなっているのが「コロナ後」の特徴だ。6月下旬の端午節3連休の国内旅行者数は延べ1億600万人と19年同期比112.8%水準となったが、観光収入は同94.9%にとどまった。「目的地は近場」「宿泊なしの日帰り」のような「安・近・短」志向が強まっているのかもしれない。
もっとも、現地では旺盛な移動ニーズを感じるのも事実だ。航空や高速鉄道の基幹路線はほぼ満員状態。今年前半は出張需要の戻りが目覚ましかったが、ここに来て旅行意欲も高まる。筆者も7月末の鉄道チケットを取ろうと試みた…
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週刊エコノミスト
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