厳しいウクライナ復興支援 「戦争保険」の拡張も不調に 木村正人
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ロシアの侵略と戦うウクライナの復興を協議する「ウクライナ復興会議」が6月21、22日の両日、ロンドンで開かれた。共同議長国のウクライナ、英国両政府は「ウクライナは自由で独立した主権を持つ民主的な国家として成功しなければならない。世界の平和と繁栄にとって不可欠だ」との声明を発表した。
世界銀行、欧州連合(EU)欧州委員会、国連の共同評価報告書によると、ウクライナの復興にかかる費用は4110億ドル(約58兆円)に上る。
第二次世界大戦で欧州は廃虚と化した。都市は粉々に粉砕され、経済は荒廃し、人々は飢餓に苦しんでいた。ソ連の膨張主義を防ぐため、トルーマン米大統領は1948年「経済復興法(マーシャル・プラン)」に署名。戦後欧州を復興させるため米国は4年間にわたり133億ドル(現在の貨幣価値で約1678億ドル)を援助した。
ウクライナ復興はまさに“21世紀のマーシャル・プラン”。ウクライナを復興させ、権威主義国家の侵略に対する防波堤にする。ロシアだけでなく、その背後に控える中国を意識しているのは明らかだ。
しかし、現実は厳しい。年内に住宅・エネルギー・交通の復興で140億ドルが緊急に必要とされる。日本を含む参加59カ国から表明された支援は、複数年にまたがる形で総額600億ドルにとどまっている。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT、電子版、6月24日付)は「霧消しつつあるウクライナ版マーシャル・プラン」と報じた。FTは「ロンドン会議への期待値は低かったものの、ウクライナ政府関係者は緊急課題だった戦争保険への対応に失望している」と指摘する。建物やインフラの直接的な損失は1350億ドル。地雷や不発弾の除去費用だけでも380億ドル。EUは4年間で500億ユーロ(7兆7500億円)の支援を約束したが、加盟国の承認を得るのは容易ではない。
復興のカギは10年間で1400億ドルを見込む民間投…
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週刊エコノミスト
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