公表が7カ月遅れた独ショルツ政権の「対中国戦略」は大幅に穏健化 熊谷徹
有料記事
ドイツのショルツ政権は7月13日に「対中国戦略文書」を公表し、中国との関係の断絶(デカップリング)は避けながらも、重要原材料などに関する依存度を引き下げる「デリスキング」の方針を打ち出した。産業界は、政府が地政学的リスクを理由に、中国に対する強硬姿勢を打ち出さなかったことを歓迎した。
独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』(7月13日付)によると、ショルツ政権は戦略文書の中で、中国を「パートナー、競争相手そしてライバル」と位置付けた。
同文書は対中問題における初の戦略方針を示したもので、「中国は新疆ウイグル自治区とチベットで人権を侵害し、香港では国際的合意に反して自治権や市民の自由を抑圧。報道や言論の自由、少数民族の自由も制限されている」と批判。「一部の重要原材料や製品は対中依存度が高すぎるので、調達先を多角化する。企業は、投資などに関する決定を行う際に、地政学的リスクに十分配慮しなくてはならない」と明記した。中国事業については企業に任せるものの、同時に経営者の責任が重くされた。
連邦統計局によると、2022年の独中貿易額(輸出額と輸入額の合計)は約3000億ユーロ(約47兆円)に達した。中国はドイツにとって、7年連続で世界最大の貿易相手国だった。今年第1四半期(1~3月)にドイツが輸入した、電気自動車(EV)電池などの製造に使われる希土の91.8%が中国から輸入された。
FAZは、「戦略文書は独政府の懐疑的な対中姿勢を表しているものの、中国の封じ込めを目指すものではない」と分析。ショルツ政権は、「二酸化炭素(CO₂)削減をめぐって、世界最大のCO₂排出国である中国と協力する必要がある」という態度を取っている。
ドイツの週刊新聞『ツァイト』の7月13日付電子版によると、ドイツ産業連盟のロスブルム会長は「この文書が地政学的リスクだけではなく、独中間の経済関係の…
残り603文字(全文1403文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める