国際・政治論壇・論調

米でインフレ目標2%への疑問が再燃 「3%妥当」説も 岩田太郎

インフレは生活者には負担だが(2023年3月、ニューヨークで)(Bloomberg)
インフレは生活者には負担だが(2023年3月、ニューヨークで)(Bloomberg)

 米連邦準備制度理事会(FRB)は物価安定の使命を果たすため、インフレ率2%を最適レベルとして金融政策の目標に定め、達成のために利上げを繰り返している。だが米論壇では、2%の目標に根拠があるのか、さらなる金融引き締めの必要性があるのか、議論になっている。

 独保険大手アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は7月21日にブルームバーグのインタビューで、「FRBが2%の目標を達成することに焦点を当てている場合、(7月の0.25%の利上げに続き)9月の再利上げの可能性を開く。FRBが2%の目標にこだわるあまり、米国は(相次ぐ利上げによって、起こる必要のない)景気後退に追い込まれる恐れがある」と述べた。

 エラリアン氏は、「FRBはデータに依存し過ぎて戦略的なものの見方ができなくなっている、いや、そうした能力がない」と斬り捨てた。同氏は従来から「2%のインフレ目標は適切ではない」と主張しており、今回のインタビューでも、「今後5~10年の米国のインフレ目標は3%付近に設定される必要がある」との見解を表明した。

 世界最大の資産運用会社である米ブラックロックの年金投資チーフであるリック・リーダー氏は7月14日の経済ポッドキャスト「ホワット・ゴーズ・アップ」に出演し、「なぜインフレ率を3%から2%に下げるだけのために、(利上げで経済を冷やし、現在の低失業率を犠牲にして)100万人を失業させなければならないのか理解できない。利上げは実行する価値がない」と語った。

 米資産運用企業マホーニー・アセットマネジメントのケン・マホーニー最高経営責任者(CEO)も7月20日の米ヤフー・ファイナンス・ライブで、「2%のインフレ目標は愚かしい。FRBの机上のゲームに付き合わされて、どれだけの人が職を失わなければならないのか。多くの人は少々物価が高くても、仕事を守りたいのだ。インフレ目標は3%が適…

残り585文字(全文1385文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事