深刻すぎる中国の雇用情勢――隠れ若年失業者+ギグワーカー+35歳の呪い 河津啓介
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中国経済の回復が遅れている。景気をけん引してきた投資や消費、輸出がいずれも振るわず、不動産不況や地方政府の債務問題など構造的な問題も抱える。
歴代の中国指導部は社会不安を避けるため雇用状況を重視してきた。今のところ全世代の失業率は5%台と比較的安定するが、若者の苦境が際立ち、6月の16~24歳の失業率は21.3%と過去最悪だった。
北京大学国家発展研究院の張丹丹副教授は経済メディア「財新」への寄稿(7月17日)で、就職難の要因として、コロナ禍による景気悪化に加え、大卒者らの雇用の受け皿だった不動産やインターネット、教育サービスのような業界が政府の規制強化で打撃を受けたためだと解説した。
張氏は、政府統計では16~24歳の失業者は630万人ほどだが、親に生計を頼り、就労も就学もしていない「隠れ失業者」がさらに1600万人いる可能性があると指摘。それを考慮すると、失業率は「46.5%」に跳ね上がるとの推計を示した。
中国のエコノミスト、王明遠氏も6月にネット上に発表した論考で、政府発表の失業率が現実の厳しさを反映していない可能性があると分析した。その理由として、まず、中国では週1時間以上働けば「就労者」とみなされるため、失業率が過小評価されやすいこと。次に、都市部への出稼ぎ労働者「農民工」やネットを通じて仕事を請け負う「ギグワーカー」の就労実態の把握が難しいという点を挙げた。王氏は今後の雇用情勢が「改革開放政策以来、最も厳しい時代となり得る」と警鐘を鳴らす。
求職に「35歳の呪い」
若者に広がるギグワーカーについては、中国地方紙『浙江日報』の記事(電子版7月23日付)が上海社会科学院研究員による調査結果を紹介。回答者の67%が経済的負担を感じ、半数近くが毎週40時間を超える長時間労働を強いられていた。多様な働き方に、社会保障制度が追いついていないことも大きな課題だという。
若者…
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週刊エコノミスト
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