ドイツが水素戦略を“野心的”に改定 生産目標を従来の2倍に 熊谷徹
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ドイツ政府は7月26日、3年ぶり改定の国家水素戦略(NWS)を公表し、2030年の国内水素生産能力の目標を、従来の5ギガワットから10ギガワットに引き上げた。日刊紙『南ドイツ新聞(SZ)』(7月26日)は、新戦略を「野心的」と評価した。
同紙によると、ハベック経済・気候保護相は、「ドイツは、30年水素需要量の3分の1を国内の水電解設備で生産し、残りをパイプラインでノルウェー、ポルトガル、スペイン、北アフリカなどから輸入する。我が国が45年までにカーボンニュートラルを達成する上で水素は不可欠」と述べた。30年目標値10ギガワットのうち3ギガワット分は、水電解設備の建設助成金の入札を近く始める。2.5ギガワットについては、欧州連合(EU)の「重要プロジェクト助成金」で確保する。
ドイツは南米、豪州、アフリカからも水素を輸入するため準備中だ。政府は、今年中に水素輸入に関する戦略文書も公表する予定。ハベック氏は、「我が国は水素関連技術のリーダーとなり、技術輸出によって経済力強化も狙う」と語った。
NWSによると、28年までに水電解設備と大口需要家(化学、鉄鋼メーカーなど)を結ぶ全長1800キロメートルの水素輸送パイプラインを完成させる。既存の天然ガスの輸送系統を改修して使うが、一部は新設される。さらに現在天然ガス備蓄のために使われている地下貯蔵設備も、将来は水素貯蔵に使われる。現在ドイツは北部の3カ所に液化天然ガス(LNG)陸揚げターミナルを建設中だが、これらの設備は将来、再生可能エネルギー由来の電気を水素分解して作る「グリーン水素」やアンモニアの陸揚げのために使用される。
生産由来巡り対立も
水素は、産業界の化石燃料を代替するために優先的に使われる。ただし政府は30年にエネルギー業界の脱石炭を実現するために、将来は水素を燃料とする(H2-ready)の天然ガス火力発電所の助成にも…
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週刊エコノミスト
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