首都直下地震の火災対応 “炎の竜巻”は高さ200メートルに/153
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東京都が昨年5月、10年ぶりに改定した首都直下地震の被害想定では、地震の被害もさることながら、大規模な火災に関する対応が重要な課題とされている。1923年の関東大震災では10万5000人以上が死亡したが、その9割ほどが火災による犠牲者だった。
「火災旋風」という高さが最大200メートル以上の巨大な炎の渦が竜巻のように移動し、至るところで勃発した火災を広域に拡散した。火柱のように炎が渦を巻いて高く立ち上って甚大な被害をもたらす現象で、東京・新宿にある都庁舎に匹敵する高さである。
火災旋風は、「木造住宅密集地域」(略して「木密地域」)などで局所的に発生した火災が、周辺から空気を取り込むことで、急激な上昇気流が発生する。これが次々と増幅されて火炎を伴った「燃える竜巻」になる。関東大震災では避難者が集まった旧陸軍被服廠(しょう)跡(現在の墨田区横網町)に火災旋風が襲来し、3万8000人が焼死した。
首都直下地震のような大地震の発生時には、必ず火災は発生すると考えられる。都は首都直下地震の犠牲者の4割は火災によると試算している。火災は地震がやんでしばらくたった後にも発生する。例えば、避難した後に電力が復旧してから起きる「通電火災」があり、木密地域では他の地域に比べて延焼の可能性が高い。
したがって、個人による消火が困難と判断したら、直ちに安全な場所へ避難しなければならない。地域一帯が火の海と化してしまう前に退避するのが肝要だ。具体的には、延焼が拡大すると約3日間は断続的に燃え広がり、焼失棟数が想定以上に発生すると指摘されている。
「木密」の外側へ避難
特に、木密地域に住んでいる場合は、その外側までの避難が望ましい。一番近くの避難所にも火が回って、火災旋風に襲われるリスクを考えておく必要があるからだ。確かに木密地域は関東大震災当時と比べて減ったとはいえ、首都圏にはまだたくさん存在する。地震を生き延びても、つぶれた木造家屋に火が回って命を落とす可能性はなくなっていない。
95年の阪神・淡路大震災では、死亡者の年齢層は50代以上が多いが、20~24歳の死亡者数の多さも目立つのは、若者が古…
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週刊エコノミスト
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