中小企業、DX化の目的は「コスト削減」が4割、「顧客満足度向上」は2割――IT支援企業が経営者アンケート
中小企業の情報システム開発を支援するサクサホールディングス(HD)が中小企業の経営者を対象に実施したアンケート調査によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的として「コスト削減」をあげた経営者の割合が4割超にのぼった。一方で「顧客満足度の向上」と答えた経営者は2割超にとどまった。中小企業では、DXをCX(顧客体験価値)や売上高の増加よりも、業務効率化を通じたコスト削減の手段として検討していることが浮き彫りになった。
「取り組んでいない」は73%
サクサは中堅・中小企業のオフィスのDX支援や情報通信システムの開発、製造、販売などを手掛けている。調査は同社が中小企業の経営者を対象に7月21~24日に実施し、218件の回答を得た。回答した企業の業種は建設業、製造、卸売・小売、不動産、サービス、情報通信、金融・保険、宿泊など。
アンケートでは「会社でDXに取り組んでいるか」との質問に対して「取り組んでいない」との回答が72.9%を占めた。生産年齢人口の減少を受けた人手不足をなど背景に、日本企業ではDX化が課題となっているが、中小企業の多くはなお動き出すことができないでいるようだ。
15%の企業で一定の成果
一方で「DXに取り組んでいる」との声も約27%あった。このうち「取り組んでいて、ある程度の成果が出ている」が最も多く、全体の12.8%だった。「取り組んでいて、成果が出ている」も2.3%あった。実際にDXに取り組んでいる企業では、一定の成果が出ているとみられる。「取り組んでいるものの、あまり成果が出ていない」は8.7%、「取り組んでいるものの、全く成果がでていない」は3.2%だった。
書類の電子化や顧客管理で活用
「DXで具体的にどんなことを実施しているか」との質問に対しては「書類の電子化」が49.2%と約半数を占めた(複数回答)。「顧客管理(名刺管理含む)」が47.5%で続いた。「経費精算」「情報セキュリティ対策」も40.7%と高い比率を占めた。「電子契約・決済」「スマホの活用」も33.9%と全体の3分の1に達した。
ペーパーレス化や生産性の向上が導入理由
DXを導入した理由について聞いたところ、最も多かった回答は「ペーパーレス化(電子化)」が47.5%でトップ(複数回答)。「生産性の向上」(45.8%)、コスト削減(44.1%)が続いた。「工数削減・業務の効率化」や「働き方改革」(35.6%)も高い比率を占めた。
「顧客満足度の向上」は3割弱
一方で「顧客満足度の向上」は28.8%、「売上高の拡大」は22%にとどまった。米国や中国企業はDXの目的を、スマホを通じた新しいサービスの提供など、「顧客満足度の向上を通じたビジネスの拡大」と位置付けることが多いが、日本の中小企業は「コスト削減」を目指しているようだ。
(日高広太郎・ジャーナリスト)