経済・企業

企業の成長期待で年度末に日経平均4万円も 広木隆

バブル以降の最高値を更新した日経平均株価。写真は5月22日の街頭ディスプレー
バブル以降の最高値を更新した日経平均株価。写真は5月22日の街頭ディスプレー

 好調な企業業績や金融緩和継続など株価が上がる条件はそろっており、自然体で株高の流れにある。さらにプラスアルファの上振れ条件も控えている。

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 今年上半期、日本株相場は大きく上昇し、主要株価指数は33年ぶりの高値をつけた。この株高をバブルだという声もあるが、筆者は至極、当然のことだと受け止めている。

 上場企業の業績は3期連続の最高益が見込まれている。日銀は世界で異例の金融緩和を継続する方針を堅持する。業績が好調で金融が緩和的なら株価が上がって当然だろう。日経平均の予想PER(株価収益率)は15倍を超え、割高だとの指摘もある。しかし今後、日本株のバリュエーション(企業価値評価)は高い水準が許容されるだろう。その理由は日本企業が投資に積極的になってきたことで日本に成長期待が出てきたからである。

 企業の背中を押しているのがインフレだ。ようやく日本もインフレになったことで、実質金利がマイナスとなり、企業の投資を誘引している。6月の日銀短観では今年度の設備投資計画は市場予想を上回る大幅な高い伸びとなった。

 また、この春の賃上げ率が30年ぶりの高さになったことから、設備だけでなく人的資本にも投資する姿勢が見て取れる。それには人手不足という構造要因も絡む。

 これまで企業はおカネをためる一方で投資をしてこなかった。企業の投資不足が日本の低成長の原因だった。ところが、今や企業はヒト・モノにカネを使い、成長へとかじを切り始めた。この企業のスタンスの変化が成長期待につながっている。

秋口から再度上昇

 今後の企業の決算発表で実際の好業績を確認できれば、株価上昇に弾みがつくだろう。中国経済の不振という懸念材料はあるものの、上方修正の要因のほうが多い。上述の短観によると全産業の23年度想定為替レートは1ドル=132.43円。足元では若干円高に巻き戻っているが、輸出企業は十分に円安の恩恵を享受できるだろう。また、エネルギーや資材などの価格が下落していることから製造業にとっては原材料コストが低減し増益要因になる。景気面では米国景気の堅調さと国内景気の強さが追い風になるだろう。

 企業が投資意欲を強め、国内景気も活性化する環境では銀行の融資も一段と伸びるだろう。日銀の政策として金融緩和は続くが、金利がこれ以上、下がることはなく、収益の面から銀行セクターは有望だと考える。

 今後の展望としては年末、年度末に向けて株価が上昇する展開を予想する。例年、夏場は材料難や投資家の休暇などで「夏枯れ」となって一進一退のもみ合いだろうが、秋口ごろから再度上昇基調が鮮明になるのではないか。

 相場のアップサイドシナリオとして、①秋に衆議院の解散・総選挙、②米国で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止の確認、③来年から始まる新NISA(少額投資非課税制度)での資金流入期待の高まり、などが考えられる。これらの要因はプラスアルファの上振れ材料だが、それらがなくても自然体で株高の流れとなるだろう。

 日経平均は年末には予想EPS(1株当たり純利益)が2400円に上昇し、PER(株価収益率)15倍の評価で3万6000円、年度末にはさらなるEPSとPERの切れ上がりで4万円の大台を超えるものと予想する。

(広木隆、マネックス証券チーフ・ストラテジスト)


週刊エコノミスト2023年8月8日号掲載

日本株 日経平均 企業の成長期待高まる 年度末に4万円の大台も=広木隆

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