教養・歴史 関東大震災
関東大震災から100年 災害伝える古文書をデジタル化した博物館オープン あいおいニッセイ同和損保
関東大震災(1923<大正12>年9月1日)からまもなく100年。この節目の年に、18世紀から20世紀初めにかけての災害を伝えた古文書をデジタル化し、インターネット上で一般に無料公開する「災害の記憶デジタルミュージアム」を、あいおいニッセイ同和損害保険がオープンした。第1回として6月27日より、「水害と向き合う」をテーマとして26点を展示している。
第2回は地震に関する資料の展示を予定している(展示の入れ替え日は未定)。
保存されている、色鮮やかな図なども含む古文書は1460点に上る。内容は地震、火災、台風、落雷、津波、噴火、伝染病など。あいおいニッセイ同和損保の前身の1社、旧同和火災海上保険にあったものが保管され続け、2018年に京都府京都文化博物館に寄託され、同館学芸員を中心に調査研究が進められている。
ネット上の公開を可能にしたのは、NHK財団。蓄積した技術を生かし、古文書をデジタル空間に展示することが可能になった。また、デジタルミュージアムでは、古文書の一部をNHK財団が開発したAI合成音声で聞くことができる。実在するアナウンサーの声をAIに学習させたという。あいおいニッセイ同和損保広報部の道前友望さんは「人々が災害に向き合ってきた貴重な記録を多くの方にみていただくことで防災・減災の意識向上に寄与できれば」と話している。
古文書は、同和火災海上保険の初代社長だった廣瀬鉞太郎(ひろせ・えつたろう、1880~1958年)が自ら収集し、同社に寄贈した。収集のきっかけは関東大震災だったとされている。
関東大震災当時の火災保険は地震による損害は補償対象外で、現在のような地震保険制度もなかった。そのため火災保険に入っていた人は保険金を受け取れなかった。しかしかつてない非常時であり、保険会社は保険金を支払って復興に寄与すべきとの世論が高まったとされている。
そんな中、廣瀬らが経営する各保険会社は政府から助成金を借り入れたうえで保険金額の1割を「見舞金」として火災保険の契約者に支払った。そうした対応にあたった経験が、廣瀬が災害資料を集めるきっかけになったと伝えられている。
10月11日~11月26日には、東京・上野の国立科学博物館の関東大震災100年企画展「震災からのあゆみ」において、会場に8K大型モニターを設置してデジタルミュージアムを展示する。
(岩崎誠・編集部)
※掲載した古文書は「水害と向き合う」で展示中の4点