集まるヒト・カネ・情報が米国の力 近ごろはモノも 多田博子
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先日、米国赴任後初の確定申告を行ったが、そのメッシュ(網目)の細かさに驚いた。筆者のような駐在員が、日本で受け取る給与やボーナスはもちろん、利子・配当金やキャピタルゲイン、不動産所得などに加え、米国外に保有する全口座の詳細、残高も課税対象として申告が必要となる。米国外口座の合計が一瞬でも1万ドルを超えたら申告義務が発生し、怠った場合は12万ドルか預金額の半分のどちらか大きい方が罰金となる。
一方、米国人や市民権保持者は、海外に居住している場合でも、全世界所得を米国で確定申告する義務がある。米国人にとって逃れられないものは「税金」と「死」との言葉もあるそうだ。「去る者追う、来る者拒まず」という米国税法制度である。
米国には毎年150万人が移民として入国する。現在では4500万人の移民が米国に居住しており、米国民の13.6%を占める。米国に足を踏み入れ、所得を得る者は、例外なく当局にデータを握られる。米国の力の源泉は、黙っていても増え続ける「ヒト」とそれに伴う「カネ」と「情報」である。米国移民(海外生まれ)による起業件数は、米国生まれの起業件数の2倍で、グーグル、アップルなど、米国の有力企業「フォーチュン500社」の40%が移民かその子供により設立されている。
米国は、公的サービスの窓口対応などはかなりいいかげんであるが、押さえるべきところはキッチリ押さえている。出入国履歴はデジタル化され、当局が全てを把握している。以前、筆者が安全保障貿易管理の仕事に従事していた際、米財務省外国資産管理室が、世界中の企業・金融機関に米財務省コンプライアンスを順守させ、時に厳しい制裁を科す手法を垣間見たが、これができるのは、基軸通貨ドルを背景に、金融機関のドル取引情報を全て把握しているからに他ならない。
対立の中国からも流入
米中対立が長期化しているが、人々が目指す先は、中国ではなく米国である。…
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週刊エコノミスト
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