マイナ騒動や物価高に怒る若者 深刻な岸田政権の支持率下落 伊藤智永
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岸田文雄内閣の支持率が、マスコミ各社世論調査で軒並み過去最低水準へ下落している。麻生太郎自民党副総裁は岸田氏に「支持率は気にしてもあまり意味がない」とアドバイスしたそうだ。在任中とても不人気だった吉田茂元首相を引き合いに「政治家の評価は死んでから歴史家が評価するもので、生きている時にほめてもらうことはない」という理屈らしいが、ピント外れもはなはだしい。
意味がないどころか、今回の支持率下落は内容的に深刻だ。安倍晋三政権時代にずっと与党支持だった30代以下の若い世代に「岸田離れ」が顕著に表れている。しかも理由は、明らかに政策への不信・批判が中心だ。内閣に連動して自民党支持も確実に減っている。政権・与党は早急に手を打たなければならない事態である。
増加する愛想尽かし
こうした特徴は、読売新聞が7月21〜23日に実施した全国世論調査結果記事が詳しい。それによると、2021年10月の内閣発足時に比べ、支持率は56%→35%、不支持は27%→52%へほぼ入れ替わったが、興味深いのは不支持の理由だ。「政策に期待できない」20%→43%、「首相が信頼できない」10%→19%といずれも倍増。ムードや何となくといった弱い理由でなく、はっきり愛想尽かしする人が確実に増えている。ちなみに、支持理由の49%は「他によい人がいない」である。
不支持の政策とは具体的に何か。読売調査は各社が非公表の世代別データが特筆されていて重宝する。以下は、設問ごとの全体の意見と、その中でも18〜39歳という若い世代の回答比率である。
Q:政府の総点検でマイナンバーに関するトラブルが解決すると思うか→「思わない」全体で78%(若い世代は最多の81%)
Q:マイナ・トラブルで岸田首相は指導力を発揮していると思うか→「思わない」全体で80%(若い世代は最多の84%)
Q:物価高に対する政府の対応→「評価しない」全体で79%(若い世代は最多の91%)
Q:少子化対策→「評価しない」全体で66%(若い世代は70%)
物価高以外は全体意見と数ポイントの差だが、他世代と比較すると10〜30代の堅固な「反岸田」意識は疑いようがない。
健康保険証の24年秋原則廃止・マイナカード一本化についても、6月下旬実施の前回調査で、若い世代は賛成50%・反対44%だったのが、賛成39%・反対55%と1カ月で逆転したという。
外遊にバラマキ批判も
東京都内の某私大法学部生十数人(20歳前後)に意見を聞いた。最も多いのは、物価高で生活が明らかに苦しくなったのに、政府は何もしてくれないという怒りだ。意外なのは、岸田首相が外遊する度に外国に巨額の援助を行っていることへの「バラマキ」批判。大局的な外交政策の是非はともあれ、「国民が物価、増税、負担増で苦しいのに本末転倒だ」という意見にほぼ全員が同意した。マイナカード騒動には「あきれた。情けな…
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週刊エコノミスト
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