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日産・ルノーの対等化が実現 中国EV市場へは出遅れる 河村靖史

2月に基本合意の記者会見をした、左から日産自動車の内田誠社長、ルノーのジャンドミニク・スナール会長、三菱自動車の加藤隆雄社長、ルノーのルカ・デメオCEO(Bloomberg)
2月に基本合意の記者会見をした、左から日産自動車の内田誠社長、ルノーのジャンドミニク・スナール会長、三菱自動車の加藤隆雄社長、ルノーのルカ・デメオCEO(Bloomberg)

 日産自動車と仏ルノーは、出資比率を対等にするとともに、ルノーが分社化する電気自動車(EV)専門会社「アンペア」に日産が最大6億ユーロ(約935億円)を出資するなど、アライアンスを見直す最終契約で合意した。

 経営不振で倒産寸前となった日産を支援するため、ルノーが1999年に出資してから、ほぼ四半世紀にわたって日産は事業規模の小さいルノーの傘下に置かれてきた。ルノーの日産への出資比率は43%なのに対して日産のルノーへの出資比率は15%。しかもフランスの会社法の関係で、日産が保有するルノー株式は議決権が付与されていない。

 ルノーと日産の経営統合を画策したアライアンストップに君臨していたカルロス・ゴーン元会長の追放後、日産はこの不平等な関係解消を狙ってきた。大きく動いたのはルノーがEV部門の分社化を打ち出したのがきっかけだ。ルノーのEVは日産が知的財産権を持つ技術を多用しており、日産の協力が必要不可欠となる。ルノーは日産にアンペアへの出資を要請した。

 主力市場ロシアから撤退し、EVシフトが加速する欧州を基盤とするルノーの焦りを読み取った日産は、アンペアへの出資や知財での協力と引き換えに、出資比率を対等にする資本関係見直しを要求。EVシフトが急務のルノーはこの要求を受け入れ、昨年11月には合意する予定だった。

長引いた交渉

 ところが日産の取締役の一部がEVに関する知財の取り扱いなどを巡ってこれに反対した。業を煮やした日産の内田誠社長らは取締役会で採決を強行、過半数の賛成を得て今年2月にルノーと資本関係見直しなどで基本合意、3月末までに最終契約を結ぶ予定だった。しかし3月末までに契約を結べなかった。

 内田社長らはアライアンス見直しに反対する取締役2人を、6月開催の定時株主総会で退任させた。これによってルノーとの交渉は一気に進んだ。

 年内をめどに日産とルノーは互いに出資比率を15%と対等にする。ルノーは保有する日産株式の約28%分をフランスの信託会社に移し、この分の議決権は持たない。日産が保有するルノー株式は議決権が復活する。また、日産はアンペアへの出資に加え、知財の取り扱いを適正にするため、取締役を派遣する。

 ただ、両社の交渉が長引いている間に、世界最大の市場である中国ではEV市場が拡大、民族系自動車メーカーがEVの販売を大幅に伸ばしている。日産はこうした市場環境の激変に追随できず、中国での販売が低迷している。ルノーの傘下からやっと脱するが、息つく間もなく成長に向けた独自戦略を打ち出していかなければ、再び危機が訪れることになりかねない。

(河村靖史・ジャーナリスト)


週刊エコノミスト2023年8月15・22日合併号掲載

日産とルノーの提携 EV化で交渉進展も 中国への出遅れ懸念=河村靖史

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